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両側“電動スライドドア”の「3ドア“コンパクト”」がスゴイ! 全長3.7m級でMT設定もアリ! 斬新すぎる「プジョー 1007」とは

くるまのニュース / 2025年1月14日 22時10分

運転席と助手席のドアを両側電動スライド式としたプジョーが存在したことをご存知でしょうか。それが、プジョーで初めて4桁数字車名を採用した「1007」でした。 

■両側電動スライドドアを採用したコンパクトカー

 コンパクトカーといえど、高いユーティリティと広い車内を持つモデルが求められる昨今。その流れは1990年代後半に現れ始めました。

 車高をアップすることで車内の容積を稼いだセミトール/トールワゴンやミニバンの要素を持つハッチバックとして、日産「キューブ」、ホンダ「ロゴ」、ホンダ「キャパ」、マツダ「デミオ」などが相次いで登場しています。リアドアをスライドドアとしたトヨタ「ラウム」も、この範疇に含めても良いでしょう。

 一方海外では、2004年にプジョーが「1007」を送り出しました。1007最大の特徴は、3ドアハッチバックながらも運転席・助手席側ともに電動スライドドアを搭載していたことです。

 運転席・助手席の両ドアをスライドドアとしたコンパクトカーといえば、かつてスズキ「アルト」に存在した「スライドスリム」があり、2004年にトヨタが発売した「ポルテ」では電動スライドドアを有していましたが、1007では両側かつ電動スライドドアを採用していました。

 1007の生産開始は2004年。その2年前のパリモーターショーで発表されたコンセプトカー「セザム(Sesame 英:セサミ、和:ごま)」の市販版でした。

 セザムは都市向けの小型車、シティカーとして企画されたもので、1007もそのコンセプトを踏襲。街で乗りやすい小さな車体ながらも、人や荷物の輸送を効率的に行えるよう車高は高く、スライドドアも乗降性を向上させるために採り入れられていました。

 全長はわずか3.7mしかなく、これは、当時発売されていたトヨタ「ヴィッツ」とほぼ同じサイズ。しかし全高は1.6mを超えており、さらにボンネットとフロントウィンドウの角度があまり変わらないというミニバン的なスタイルにより、小さなミニバンともいえるフォルムを持っていました。

 そのためプジョーでは、高いユーティリティを備えた1007を、MPV(マルチ・パーパス・ビークル)として捉えていたようです。

 車高が上がったことで着座位置・アイポイントもアップ。視界も広く取られていました。

 個性的なデザインは、長年にわたりプジョーに関わってきたピニンファリーナも参画して生まれたもの。セザムの外観をおおむね引き継ぎながらも、口ひげを蓄えたようなフロントマスクに変更されていました。

 パワートレーンは、SOHCの1.4リッターかDOHCの1.6リッターガソリンエンジン、および1.4リッターディーエルエンジンにクラッチレスの5速マニュアルトランスミッション「2トロニック」の組み合わせ。都市向けのクルマらしいイージードライブを可能としていました。

 なお「2トロニック」は、同時期にシトロエンに搭載されていた「センソドライブ」と同じシステムです。

 定員は4名で、リアシートもスライド&折りたたみが個別に可能な独立タイプ。スライドドアは開口部920mmを確保しつつ、完全に開いた際も車体後部から飛び出ない設計とされていました。開閉はリモコンもしくはダッシュボードのスイッチ、さらにドアハンドルで行うことができ、挟み込み防止機能も装備。

 スライドドアの美点である乗降性の良さを保つために、1007では開いたドアの張り出し量をドアミラーの幅プラス1cm程度にとどめていました。

 日本には2006年、プジョージャポンによりガソリンエンジンのみで発売を開始。1.6リッターモデルでは、モールのボディカラー化やアルミホイール・オートエアコンの装着など内外装で差がつけられていました。

 そのほか1007では、内装を12色に「着せ替え」できる「カメレオキット」が用意されるなど、数々の新機軸を打ち立てていました。

 従来のプジョーと異なる「4桁数字」の車名は、プジョーでは「従来のカテゴリーと異なる新しいコンセプト」を持つクルマに与えると説明していますが、1007は、まさにそれにふさわしい画期的なコンパクトカーといえました。

 ところが、個性的なデザインやコンセプト、パッケージングが災いしたのか、販売は決して芳しいものではなく、日本市場では2008年、欧州でも2009年に生産を終了。明確にコンセプトを継いだクルマは、現れませんでした。

※ ※ ※

 新しいコンセプトや価値観を求めたクルマが失敗作となることは珍しくありません。残念ながらプジョー1007は成功しなかったのですが、このようなチャレンジングなクルマがあってこそ、クルマの世界は広がりを見せるもの。

 今後もあっと驚くようなクルマが登場することを期待したいと思います。

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