日産がスゴい「2人乗りR32 GT-R」を公開! デザインそのままに430馬力「高性能ユニット」の“超静音仕様”で登場! 車好き大注目の「大改造EV化プロジェクト」なぜ開始した?
くるまのニュース / 2025年1月10日 8時0分
日産は、開幕した「東京オートサロン2025」で、「スカイラインGT-R(BNR32型)」をEV化した「R32 GT-R EVコンバージョン」を公開しました。一体どのようなクルマなのでしょうか。
■今の日産社員も思い入れの強い「R32 GT-R」 なぜEV化?
日産は2025年1月10日、幕張メッセ(千葉市美浜区)で開幕されるカスタムカーの祭典「東京オートサロン2025」に、「R32 GT-R EVコンバージョン」(以下R32EV)を出展しました。
R32EVは名称の通り、1989年に登場した8代目「スカイライン」のハイパフォーマンスモデル「スカイライン GT-R(BNR32型)」をベースにEV(電気自動車化)を果たしたものです。なぜEV化したのでしょうか。また、どのような特徴があるのでしょうか。
スカイラインGT-Rの系譜は、1969年登場の通称「ハコスカ」(PGC10型)まで遡ります。
おとなしいセダンボディに、量産車としては異例のサーキット専用レーシングカー同等の超高性能エンジンを搭載し、レースで勝つためのモデルとしてラインナップされてきました。
このうちBNR32型は、搭載エンジンなどが異なることや、“第1世代”の最終型となるスカイライン GT-R(KPGC110型・ケンメリ)の生産終了から16年ぶりに復活を果たしたことから、いわゆる“第2世代”GT-Rに分類され、その最初のモデルです。
パワートレインには当時の出力自主規制いっぱいの280馬力を発揮する2.6リッター直列6気筒「RB26DETT」型ツインターボエンジンや、四輪制御システム「アテーサ E-TS」によるフルタイム4WDといった最新の技術を採用。
歴代モデル同様にモータースポーツで大活躍し、全日本ツーリングカー選手権などで好成績を収めました。
現在でも第一級の走行性能を持つことに加え、近年ではアニメや漫画、映画の影響により海外でも爆発的にヒット。国産スポーツカーの定番として、国内外に非常に多くのファンを持っています。
そんなBNR32型をベースに、日産は2023年3月に公式SNSで「日産はR32型スカイラインGT-RのEV試作車製作に挑戦します。」とアナウンス。日産の有志たちが集い、EV化プロジェクトがスタートしました。
このとき、SNS上ではハッシュタグ「#R32EV」とともに、非常に大きな反響が寄せられ、以後もR32EVの製作過程を動画や写真などで逐一公開し、プロジェクトの様子が明らかになっています。
そして今回、ついに日産公式として公の場に姿を表すことになりました。
では、なぜR32EVプロジェクトが立ち上がったのでしょうか。日産自動車パワートレイン・EV技術開発本部 エキスパートリーダーの平工 良三氏は、以下のようにコメントしています。
「R32 GT-Rに乗ると、現代のクルマとは違った高揚感や気持ちよさがある。このワクワク感を後世に残すことはできないか?という想いから、このプロジェクトが始まりました。
R32 GT-Rを、将来に渡り良いコンディションで維持することは簡単ではありません。もし、電気やデジタルの技術を使ってR32GT-Rの魅力を再現することができれば、後世に渡って、R32GT-Rのワクワクを残すことができるのでは、と考えました。
R32のアナログ的(ガソリン車)な良さを、もし、デジタル(EV)データで再現することができれば、30年後でもR32GT-Rの魅力を味わうことができる。いわば『クルマのデジタルリマスター版』のようなものとも考えています。
この活動は商品化のためのものではありませんが、一緒に活動している若いエンジニアとともに“楽しいクルマとは何か”を探求し、今後も日産の技術を磨いていきたいと思っています」
徹底した「オリジナル」の雰囲気
しかし、日産だけでなく、国産スポーツカーを代表するモデルということもあり、社内からもさまざまな意見があったようです。
「日産の従業員のなかには、思い入れの強いメンバーも結構いるので、なかでも(新車登場時の衝撃を知る)40代より上の世代からすると、R32GT-Rはそうとう“神格化”されています。
社内からも『触るな』『何してくれているんだ』という声もありました」(日産 平工氏)
とはいえ、平工氏自身もスカイラインを乗り継ぎ、R32型にも思い入れが強かった分、オリジナルを極力残すようにしたといいます。
「私自身も当時買いたくて買えなかったクルマで、R32は乗っていたんですけども、GT-Rは買えなくて。私から見ても神格化されたクルマです。
R32が大好きで、しかもオリジナルの雰囲気が一番好きなのでデコレーションしたくなかったのです。そのままが良いと思ったので、ホイールも純正のデザインを活かしたままインチアップしたオリジナルのものを、新たに製作しました。
EVなのでエンジンルームは違いますが、それ以外の外回りはマフラーがない以外はほとんど変えてません」
■「R32EV」詳細スペックは? 「音」「振動」まで再現
パワートレインはRB26DETTや5速MTを降ろし、日産のEV「リーフ」用のモーターとリーフのレーシングカー「リーフNISMO RC02」のバッテリーを搭載。なお、再び当初のRB26DETTエンジンに戻すことも可能だといいます。
4WDシステムもアテーサ E-TSから前後2モーター4WDへ変更し、トランスミッションは無段変速機ですが、パドルシフトで擬似シフト操作ができるようになっています。
これにより、最高出力は320kW(約435馬力・160kW×2基)、最高トルク680Nm(340Nm×2基)を確保しました。車重は1797kgで、重量に合わせてモーター出力・トルクをチューニングし、パワーウエイトレシオはBNR32と同等としています。
ボディサイズは全長4545mm×全幅1755mm×全高1340mmと変更はありません。
インテリアも「当時の匂い」そのまま
エクステリアでは、BNR32型らしいデザインを残すことを重視したといい、EV化のためにマフラーを装着しない点や給油口が充電ポートとなっている点が異なるのみでカスタムなどは一切行われていません。
一方、車重の増大やパワーの向上に合わせ、ブレーキ性能は十分な容量を確保しました。後継かつ“第3世代”「GT-R」であるR35型のブレンボ製ブレーキを流用。これに伴い、アルミホイールのサイズも18インチへと変更されています。
前述の通り、ホイールは16インチの純正ホイールとデザインを全く同一としたオリジナル品です。このほか、足回りにはオーリンズ製のスポーツサスペンションキットを装着しています。
インテリアもBNR32型らしさをそのまま残しつつ、EV化と現代流のアレンジも加えられました。
メータークラスターは視認性の良い液晶ディスプレイを採用。メーターのフォントや配置などはBNR32型の標準装着品そのままで、当時の雰囲気が活かされています。
センターコンソール中央には通常、3連メーター(右からブースト・油温・電圧)とエアコンコントロールパネル、純正のカセットデッキが備わりますが、このエリアをすべて大画面の縦型液晶ディスプレイで完全再現したのも見ものです。メータークラスター同様に当時のフォントを用いています。
ステアリングは先出の通りパドルシフトが備わり、ステアリングコラムのキーシリンダーとは別に、プッシュボタンのシステムスタート/ストップボタンを装着。クラッチペダルはありません。
シフターユニットはAT化に伴い、特注品を装着。シフトノブはMTのようなグリップ型タイプですが、シフト操作はゲート式のAT車と同一です。
シートも純正とは異なる形状で、8代目の「SKYLINE」のロゴをあしらったレカロ製に換装。一方当時の1990年代の日産車特有の匂いはまだ残っています。
リアシートがあったところには、大きなバッテリーユニットを搭載。乗車定員は2名となりますが、カバーにはSKYLINEロゴをあしらい、車内の雰囲気を壊さないようにしています。
このほか、専用のエンジン音再現サウンドシステムを搭載。サウンドは車内のみで車外には再生されず、インパネ左のサテライトスイッチを押すことで作動します。
このサウンドは有志チームメンバーの“音マニア”がRB26DETT型のエンジンサウンドを徹底して研究したといい、アイドリングや空ぶかしだけでなく、エンジンの各回転域におけるシフトアップ/ダウン音も再現。
こうした五感で感じられる雰囲気のほか走行特性についても、ベースのBNR32型を栃木のテストコースに持ち込み、当時のシャシー設計担当者で、現代の名工にも選ばれた伝説のテストドライバー加藤 博義氏が走り込み、徹底してデータを収集。
クラッチの動きやアクセルのフィーリング、MT車やRB26DETT型特有の振動などの部分に至るまで、ドライビングの楽しさを追求しました。
BNR32型らしいエモーショナルな部分をなくすことなく、完全なEV化を果たしたのです。
前出の平工氏は、プロジェクトについて以下のように振り返ります。
「どちらからというと大変だったという部分も大きく、メンバーもヘトヘトだったという感じでした。しかも本当の開発業務ではなく、空いている時間に部活のように進めたので、かなり疲れているメンバーもいました。
でも『後に引けないから最後までやろうぜ』という感じで進み、サーキットで走行会と撮影をやったときはかなりの興奮状態でした。その後みんなで飲みに行ったときも、ものすごい盛り上がりました」(日産 平工氏)
SNSなどでも日産ファンやスカイラインファンなどから多用な意見が飛び交ったR32EV。日産として今回公に披露されることとなり、注目の1台となりそうです。
※ ※ ※
東京オートサロン2025の日産ブースではR32EV展示のほか、また「R32EVトークショー」として、GT-Rのスペシャリストの田村 宏志氏と日産自動車 パワートレイン・EV技術開発本部 エキスパートリーダー 平工 良三氏が対談します。
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