「普通のクルマのMT」なぜ今でも存在する? まさかの「ヤリス」「ワゴンR」に“3ペダル車”アリ! 一体どんな人が購入するのか?
くるまのニュース / 2025年1月16日 19時30分
ATやCVTが全盛の現在、スポーツカーですらMTを選べる車種は少なくなっています。そんなか、スポーツカーではない、いわゆる「普通のクルマ」でもMTを選べる車種があります。一体どのような魅力があるのでしょうか。
■スポーツカーじゃない「普通のクルマ」にMTが設定されるワケ
昨今の日本は「AT大国」ともいえ、高級車や大型車はもちろん、軽自動車、商用車に至るまで、ほとんどの車両にATまたはCVTが採用されている状況です。
そして高級スポーツカーもAT(正確にはクラッチレスの2ペダル化)が増えています。
そんななか、ごく少数ですが、スポーツカーではない“普通のクルマ”に3ペダルのMTがラインナップされる車種があります。一体どのような人が普通のクルマのMTを購入するのでしょうか。
一般社団法人「日本自動車販売協会連合会」の新車販売台数年報によると、日本のAT普及率は徐々に上昇しており、1985年の48.8%だったAT普及率が1990年代に急増。1995年には8割以上、2000年代に入ると91.2%となり、現在は約99%がATという状況です。
一方で、欧州はいまだにMTがメインで、AT普及率は3割にも届きません。もちろん日本でも販売されるような欧州の高級車ではATも多いのですが、一般市民が乗るような普通のクルマはMTが売れているのだそうです。
日本でここまでATが普及している理由として、交通事情が大きく影響しており、信号の多さや、渋滞が発生しやすい道路環境により、頻繁な“ストップ&ゴー”を余儀なくされることから、クラッチやシフトの操作が不要なATが普及しました。
そして決定的だったのが、1991年11月に導入された「AT限定免許」でしょう。さらに、ATが急速に普及し出したタイミングで登場した「MTモード付きAT」も話題にとなり、ATでMT気分が味わえる技術も登場したことから、MTである意義が薄れてしまったともいえます。
さらには、昔は憧れの象徴だったクルマが、快適な移動手段という認識に変化してきたのも大きな転換点かもしれません。
それまでのMTを駆使するスポーツカーが衰退し、誰もが乗れるミニバンがブームとなり、より手軽に運転できることが求められたこともATが普及した要因といえるでしょう。
そんなAT大国となった現在の日本市場でも、非スポーツカーやスポーティグレードでもない普通のクルマにMTをラインナップする車種があります。
例えば、トヨタ「ヤリス」やトヨタ「カローラアクシオ/フィールダー」(現行モデルと併売されている先代モデル)、マツダ「MAZDA2」に加え、スズキは軽ワゴンの「ワゴンR」や小型車「スイフト」にもMTの設定があるのです。
これらの普通のクルマのMTは、なぜ残っているのでしょうか。自動車販売店のK店長に聞いてみました。
「いまだにMTしか乗りたくない、もしくはMTしか乗れないというベテランドライバーが一定数いらっしゃいます。
そういった需要に応えるため、スポーツカーではない普通のクルマにMTが用意されているというわけです」
ただし、「選択肢は多いほうがいい」というトヨタでも、現行「カローラハッチバック/ツーリング」のMTを廃止するなど、いつまでも残すとは思えず、少なくとも日本市場で普通のクルマのMTは増えることはないと思われます。
では、それとも、あえて普通のクルマでMTに乗ることにメリットはあるのでしょうか。
「非力なエンジンを自分の運転テクニック(ギア選択など)でカバーする楽しさはあると思います。
欧州ではMTが主流なこともあり、低いギアを活用して遅いクルマを上手に走らせてナンボ、という考えですね。
クルマ好きなら自分のウデで上手に走らせるという喜びがあるでしょう」(自動車販売店 K店長)
ATがこれだけ進化した現在、MT操作にこだわる必要性はかなり薄くなりましたが、普通のクルマのMTは速度が出てなくても運転しているという実感が強く、むしろ安全運転につながるかもしれません。
ワゴンRのMTなど、めちゃめちゃツウな選択肢なのではないでしょうか。
※ ※ ※
今やMTは全体の1%しかない希少さとなっており、ディーラーでの下取りや大手買取店などでは評価されにくいかもしれませんが、中古車ショップによってはその希少価値を評価してくれる傾向もあるようです。
普通のクルマのMTに興味があるなら、廃止される前に所有してみるのも良いのではないでしょうか。
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