トヨタ「カムリ」日産「ムラーノ」復活か 日本未発売の「米国生産車」 輸入検討の背景とは
くるまのニュース / 2025年12月23日 9時30分
2025年12月19日にトヨタは、米国生産の「カムリ」「タンドラ」「ハイランダー」を2026年から日本への導入を正式に検討すると発表しました。日産やホンダも同様の検討を進めてると言われている中、なぜ今「米国車」の正規導入が相次ぐのでしょうか。その背景にある日米の自動車産業を巡る事情と、ユーザーが得られるメリット・デメリットをくるまのニュース編集部が解説します。
■トヨタに続き日産・ホンダも検討!? 米国生産車の日本導入が加速する「政治」と「勝算」
トヨタが2026年から米国生産車の導入を目指すと発表したことは、日本の自動車市場におけるひとつの転換点となるかもしれません。
対象となるのは「カムリ」「ハイランダー」「タンドラ」の3車種。さらに日産やホンダも、米国工場で生産されたセダンやSUV、ピックアップトラックの日本導入を検討しているようです。
これまで限定的だった「米国生産車の日本販売」が、なぜ今、各社で本格的な検討フェーズに入ったのでしょうか。
そこには、単なるラインナップ拡充だけではない、日米間の貿易事情と制度改正という複合的な要因が見え隠れします。
今回の動きの背景には、大きく分けて「貿易バランスへの配慮」と「メーカーの生産事情」という2つの側面があります。
まず無視できないのが、日米間の自動車貿易における不均衡です。
日本から米国への輸出に対し、米国から日本への輸入が少ない現状は、通商交渉の場でもたびたび議論の対象となってきました。
トヨタが今回の発表にあたり、導入の目的の一つとして「より良い日米貿易関係への貢献」を挙げていることからも 、この施策が外交的な意味合いを含んでいることは想像に難くありません。
また、今回のカムリや一部報道で例にあげられている「ムラーノ」は過去に日本で販売されていました。
そのため、再販売することで「確立されたカムリ、ムラーノというブランド力の活用」、「離れたユーザーの呼び戻し」というメーカー側のメリット、「昔乗っていたあのクルマに乗りたい」というユーザー側のメリットにも繋がります。
■■メーカー視点の「メリット・デメリット」
メーカーにとって、米国生産車をそのまま日本へ持ち込むことは、決して容易なプロジェクトではありません。
【メリット:既存資産の活用とリスク分散】
最大のメリットは、日本専用モデルを一から開発することなく、魅力的な商品を市場に投入できる点です。
編集部による過去の取材で、トヨタの中嶋裕樹副社長は、導入判断を「認証の難易度」と「市場性」の掛け算だと説明しています。
すでに開発済みの車両を活用することで、開発リソースを抑えつつ、ニッチながらも確実な需要が見込める層へアプローチできるのは合理的です。
また、貿易摩擦の緩和という観点でも、企業としての姿勢を示すメリットは大きいでしょう。
【デメリット:立ちはだかる「法規の壁」】
一方で、大きな課題となるのが「日本の法規への適合」です。中嶋副社長によれば、世界戦略車である「カムリ」のようなモデルは導入ハードルが低い一方、米国専用設計の「タンドラ」などは、そのままでは日本の車検制度に適合しません。
日本の保安基準に合わせるための改修コストや、認証取得にかかる時間(リードタイム)は、ビジネスとしての採算性を圧迫する要因となります。
ただし、この点については国土交通省が、米国で安全認証を受けた車両の日本での審査を簡素化する新制度を検討しており 、制度面のハードルは下がる方向に向かっています。
■■ユーザー視点の「メリット・デメリット」
制度や政治の事情はあれど、実際にステアリングを握る私たちユーザーにとっての影響はどうでしょうか。
【メリット:選択肢の多様化と「復活」】
もっとも大きな恩恵は、画一的になりがちな国内ラインナップに、個性的な選択肢が増えることです。
2023年に日本販売を終了した「カムリ」や2015年に同じく日本販売を終了した「ムラーノ」のように親しまれたモデルが再び手に入るようになるほか 、日本では正規販売されてこなかったフルサイズピックアップなどが、メーカー保証付きで購入できるようになります。
日産「パスファインダー」、ホンダ「リッジライン」など、海外でしか見ることのできなかったモデルが身近な存在になる可能性もあります。
【デメリット:サイズと維持環境】
懸念点は、やはりそのボディサイズです。
米国市場を主眼に置いたモデルは全幅が広く、日本の道路事情や駐車場環境では取り回しに制約が出ることは避けられません。
また、輸入車扱いとなることで、輸送費や為替の影響を受けた価格設定になる可能性や、部品供給のリードタイムが国内生産車に比べて長くなるリスクも考慮しておく必要があります。
■■制度変更がもたらす市場の変化とは
ホンダが米国生産する「リッジライン」
今回の各社の動きは、単なる「輸入販売」にとどまらず、認証制度の合理化という行政の動きとセットで進んでいる点が特徴的です。
トヨタは「準備自体はできている」としつつも、リードタイムの短縮が課題であると認識していました。
新制度によってこの課題が解消されれば、2026年以降、日本の路上で米国生まれの日本車を見かける機会は確実に増えるかもしれません。
「政治的な要請」がきっかけであったとしても、結果として魅力的なクルマが日本のユーザーに届くのであれば、市場の活性化につながるポジティブなニュースと言えそうです。
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