えっぐおじさん、卵の殻で人々に笑顔を 宮城・名取市、出前教室で全国奔走
共同通信 / 2024年2月18日 9時3分
卵の殻に絵を描くエッグクラフトに50年以上取り組み「えっぐおじさん」と呼ばれる男性が宮城県名取市にいる。口コミで評判となり、作り方を教える出前教室は北海道から九州まで各地で引っ張りだこ。気付けば18都道府県を訪れた。「参加者の笑顔が最大の喜び。笑顔の輪をもっと広げたい」と声を弾ませる。(共同通信=柳沢希望)
「特に目を描くときは、気持ちを込めて」。真剣なまなざしでこう話すのは、えっぐおじさんこと菊地克三(きくち・かつぞう)さん(73)。作り方は、まず卵の一部を切り抜いて中身を取り除き、殻に絵の具を塗る。乾いたら、次は細筆で顔や模様を繊細に描く。最後にニスを塗って完成だ。「丸みと壊れやすさがなんといっても卵の魅力」と目を細める。
菊地さんは秋田県由利本荘市出身。子どもの頃は勉強、運動、音楽と何をやってもうまくいかなかったが、転機は中学2年の時。雑誌に載った、卵の殻で作ったこけしを見て試作し、学校の自由研究発表会で金賞を受賞した。近所に報告して回るほど喜ぶ家族の姿を見て「自分にも人に褒められるものがあったんだ」と自信を持った。
大学を卒業し、仙台市内の総合商社に就職してからも、休日は部屋にこもってひたすらエッグクラフトの制作に没頭。個展の開催などを通じ、評価を高めた。
58歳で早期退職後、もっと多くの人に体験してもらいたいと、工房の設置を家族に提案した。妻からは「卵の殻で食べていけるわけないでしょう」と猛反対されたが、何とか説得して自宅の物置を改造。2010年に「えっぐ工房」を開いた。
工房を拠点に活動を続け、地元の学校や老人クラブなどで出前教室を開いていたが、次第に全国から依頼が相次ぐようになった。工房を訪れる個人客も絶えず、教室の参加者は延べ約3万5千人に上る。
出前教室や工房での体験は、公式ホームページから申し込める。えっぐおじさんは「あなたも世界に一つだけの作品を作ってみては」と、卵の世界にいざなっている。
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