「しょうゆ発祥の地」から次はワイン醸造 和歌山・湯浅町、地元果物を全国発信
共同通信 / 2024年4月7日 18時6分
しょうゆ醸造発祥の地として知られる和歌山県湯浅町で、新たな醸造・発酵文化を追求しようと、ワイン造りが始まっている。挑戦するのは地元の石油関連会社。湯浅町栖原に2019年、「和歌山湯浅ワイナリー」を設立し、ミカン畑だった耕作放棄地を使ってブドウを栽培している。(共同通信=塚田晴菜)
和歌山市から南へ約30キロ。ミカンの木々が連なる小山に、白と黒を基調とした外観の大規模な醸造所がある。
石油関連会社「TOA」会長の橋本拓也さん(68)は、18歳から別の石油会社に勤め、東京や海外で勤務する中、生まれ育った和歌山の知名度の低さを悔しいと思ってきた。「おいしいものがたくさんある。特に果物は格別。いつか和歌山の魅力を発信したい」と考えていた。
TOA社長となり、最高の果物を遠方に住む人にも味わってほしいと、ワイナリー事業を始めた。
現在は山梨、長野両県のブドウを使っているが、地元産ブドウでの醸造を目指す。地域は高齢化と少子化で、農家のなり手不足も課題だ。そこで、耕作放棄地を使ってブドウ栽培も始めた。
工場長は、ワイナリー開設に合わせて兵庫県から移住したワイン造り40年の経験を持つ西馬功さん(58)だ。「難しいから楽しい。和歌山でしか生まれない味を作りたい」と意気込む。
年間約1万5千本、計30種類のワインを製造している。赤と白それぞれ、辛口とライトボディーを用意。ワインの他にも、地元産のミカン、ユズ、ジャバラ、桃、梅を使ったリキュールも看板商品としている。
TOAはワイナリーの他に2019年、大阪府東大阪市に日本語学校を設立した。ミャンマーやネパールからの学生が多いという。
橋本さんは、いずれ卒業生らと国境を越えて一緒に仕事ができればと期待する。「いつか海外の市場に、湯浅のワインが並び、多くの人に飲んでもらえたらうれしい」と力を込めた。
ワインは1本1210~4950円。ワイナリーやオンラインストアで購入できる。
▽湯浅しょうゆ 鎌倉時代に、中国・宋で修行を積んだ興国寺(和歌山県由良町)の禅僧が伝えた「金山寺みそ」の製法から生まれた。みその製造過程で染み出る液体が芳醇だと知った人々が、改良を重ねて調味料として使い始めたのが起源とされる。
文化庁は2017年、湯浅のしょうゆ醸造文化を日本遺産に認定した。現在は数軒が製造を続ける。
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