酒米の作付面積10年で7割増、北海道 ニセコ町産原料の日本酒、全国販売も
共同通信 / 2024年5月22日 7時2分
「ゆめぴりか」「ななつぼし」などのブランド米で知られる北海道で、酒米の生産が増えている。品種改良によって徐々に評価が高まり、地球温暖化の影響で全国的にコメの品質低下が懸念される中、2022年産の作付面積は10年前に比べ7割増。酒造会社も道産米を使った商品の製造、販売を本格化させた。新品種の開発に取り組む道立総合研究機構(道総研)の担当者は「道内の産業振興につなげていきたい」と語る。(共同通信=小川悠介)
日本酒「八海山」で知られる八海醸造(新潟県南魚沼市)は2023年末、吟醸と純米大吟醸「ニセコ蝦夷(えぞ)富士」の全国販売に乗り出した。北海道ニセコ町産の酒米「彗星(すいせい)」が原料で、地域のシンボル羊蹄山(ようていざん)(1898メートル)の別名にちなんだ。希望小売価格はいずれも720ミリリットル入り2530~3289円(箱なし)。
八海醸造グループはニセコ町で2021年にウイスキー製造を始めたのをきっかけに、同町の米を南魚沼市の蔵に運び日本酒を醸造するようになった。
料理によく合う、すっきりとした味わい。当初は道内限定の取り扱いだったが、人気が高く、増産体制を整えた上で全国展開に踏み切った。2024年は前年比5割増の数量を販売する計画だ。
北海道では1998年、農林水産省北海道農業試験場(現在は農業・食品産業技術総合研究機構)で育成された酒米「初雫(はつしずく)」が誕生。その後、彗星や「吟風」「きたしずく」も登場し、道庁によると、作付面積は2022年産が350ヘクタールと、2012年産の207ヘクタールから約1.7倍に増えた。
道総研農業研究本部は新たな品種を開発中で、早ければ5年後にも生産本格化を見込んでいる。
農水省の調査では、記録的な猛暑に見舞われた2023年産米は1等米比率の全国平均が2004年産以降で過去最低に。酒米も稲穂が発育する「登熟期」の気温が高すぎると、米粒が白濁するなどの障害が発生するという。
道総研の神野裕信・作物開発部長は「道産の酒米を使った日本酒の注目度は今後さらに高まるだろう」と期待を込めた。
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