汚れた札束握りしめ、貯蓄を金の指輪に交換 ミャンマー通貨安、徴兵で若者減り人手不足も
共同通信 / 2024年6月1日 8時6分
事実上の内戦状態に陥っているミャンマーで、経済の混乱が市民を苦しめている。通貨チャットの下落が続き、生活必需品の価格が上昇。市民は現金を安全資産の金に換えて防衛を図る。中古車価格も上がり、観光業は低迷。貿易の要衝での戦闘激化も伝えられる。徴兵制の実施が若い労働力の確保にも影響し、先行きは見通せない。(共同通信=伊藤元輝)
▽財産守る唯一の手段
半ズボンにサンダル姿の男性(52)が、かばんから汚れた札束を丁寧に取り出し、カウンターに置いた。最大都市ヤンゴンの金販売店。タクシー運転手としての蓄えを金の指輪に換えた男性は「現金はどんどん価値が下がるから不安だ。庶民も貯金代わりに金を買う」と明かした。
男性が購入したのは2024年2月下旬。その後、ミャンマーで金価格は何度も過去最高額を更新した。金の高騰は世界的潮流だが、ミャンマーでは軍事政権の国家運営への不信感が価格を押し上げる。庶民は財産を守るほぼ唯一の手段の金に手が届きにくくなっている。
通貨安は深刻で、軍政は1ドル2100チャットの公定レートを定めるが、市井でやりとりされる実勢レートは2024年4月下旬時点で3800チャット台に下落。輸入品の価格も上昇し、食用油などの値上がりが生活を圧迫する。2021年2月のクーデター以降、軍政は外貨流出を防ごうと車の輸入も制限。中古車価格は高止まりしている。
▽貧困率50%で中間層消滅
ヤンゴンの街は高級ホテルやショッピングモールもあり、クーデター前の経済発展を思い起こさせる。ただ、外国人観光客の姿はほとんどなく、土産物市場も閑散としていた。国連開発計画(UNDP)によると、ミャンマーの貧困率は昨年時点で50%に迫り、中間層が消滅しつつある。
2023年10月下旬以降、軍政を認めない民主派や少数民族武装勢力の攻勢が強まり、一部地域では国軍が劣勢になっている。2024年4月中旬には南東部にある隣国タイとの貿易の要衝ミャワディが攻め込まれ、経済にも影響が及ぶ。徴兵で若い労働力が軍に取られ、徴兵を避けたい若者の国外脱出の動きも重なって人手不足の懸念も強まる。
一方で富裕層に娯楽再開の動きがある。ヤンゴン中心部のダンスクラブでは戒厳令下にもかかわらず人気歌手のコンサートが開かれる。軍政は一部娯楽を容認し、平和な社会を演出して統治の正当化を狙っているとみられる。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「国境通信」野良犬を拾って育てる避難民 川のむこうはミャンマー~軍と戦い続ける人々の記録#2
RKB毎日放送 / 2024年6月25日 17時36分
-
ゾウ譲り受け、軍の政治利用懸念 福岡市動物園にミャンマー人抗議
共同通信 / 2024年6月18日 15時51分
-
世銀、ミャンマーの24/25年度成長率予想を1%に下方修正
ロイター / 2024年6月12日 14時52分
-
ミャンマーODAの橋開通 クーデター後も事業継続
共同通信 / 2024年6月9日 9時4分
-
外国人との対話を十分に行わない日本人の悪癖 「○○人」と一括りではなく「個人」として付き合え
東洋経済オンライン / 2024年6月9日 7時50分
ランキング
-
1市営住宅で76歳女性死亡 殺人事件として捜査 同居の次男と連絡取れず 高知
ABCニュース / 2024年6月25日 22時30分
-
2副作用や死亡要因疑い後も中止せず ハンセン病患者に開発中の薬投与
毎日新聞 / 2024年6月25日 19時24分
-
3「富士山コンビニ」の幕、黒から茶色に張り替えへ 丈夫な別素材に
毎日新聞 / 2024年6月25日 18時40分
-
4岸田首相の「独断専行」に苦言=伊吹元衆院議長
時事通信 / 2024年6月25日 23時29分
-
5「三木楽器」の取締役を逮捕 ワシントン条約で規制されている木材をパラグアイから密輸しようとした疑い「20回から30回ほど輸入し、ギターとして販売していた」
MBSニュース / 2024年6月25日 17時25分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください