「絵本を通じて平和つくりたい」 僧侶が店主務める専門店、京都・左京
共同通信 / 2024年6月11日 8時4分
絵本への理解を深める講座、一人一人に合わせた選書―。
京都市左京区にある子どもの本専門店「きんだあらんど」が、大人に向けた取り組みに力を入れている。店主は僧侶の蓮岡修(はすおか・おさむ)さん(51)。原動力は「絵本を通じて平和をつくりたい」との思いだ。
「絵本は人生に思ってもみない影響を与える」。4月19日夜、大手書店で児童書を長年担当した講師を招いた特別講座が店内で開かれた。講師が語りかけると、オンラインを含む参加者約20人は熱心に聞き入っていた。
島根県内の寺の家に生まれた蓮岡さん。京都にある仏教系大学に在学中、戦場カメラマンを志しアフガニスタンに何度も渡った。
大学院生の時、現地で人道支援に尽力していた医師の故中村哲(なかむら・てつ)さんに出会う。平和には行動が必要だとの考えに感銘を受け、卒業後は海外の紛争地や被災地で支援活動に従事した。
寺に所属しない僧侶として小さな平和をつくるとの思いがいつもあった。海外で出会った戦争孤児が絵本を夢中になって読む姿を見て、絵本に大きな力があると気付いた。
「これしかない」。帰国し絵本創作に励む中、童話の勉強会を通して「きんだあらんど」を知る。後継者のいない店主から打診され、2008年に店を継いだ。
「品位のある言葉と、うそのない物語」が店に並べる本の基準だ。「とにかく良いものを提供する」との信念で、学校や児童館向けの選書にも打ち込んだ。
メールでカウンセリングし、選書リストと解説の手紙を送るサービスも開始。評判が徐々に広まり、大学から依頼され「人権と絵本」というテーマで講師も引き受けた。
絵本のプロが増えれば平和の輪が広がっていくとの思いが強まり、2016年に「大人のための絵本講座」、2021年には「絵本屋さん養成講座」をそれぞれ始めた。作家や編集者、書店員を招いたイベントも精力的に開催している。
「絵本を一緒に読み、笑顔がまじり合う時間こそ平和ではないか」。そう信じている。
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