女性職人が作る剣道具、こだわりの機能性 岩手メーカー、全国剣士に「楽しんで」
共同通信 / 2024年7月7日 9時3分
「カタカタカタ」と小気味よくミシンの音が響く工場。13人の女性職人が作っているのは剣道着と防具だ。「縫製のまち」と呼ばれる岩手県久慈市のメーカー「七星」は創業10年ながら、丁寧な手作業で全国の剣士から好評を博している。「心置きなく剣道を楽しんでほしい」と、機能性と安全性にこだわった。(共同通信=阿部幸康)
女性たちは裁断や刺しゅうなど工程ごとに黙々と作業を進める。布地は厚く、手縫いの部分は1針ごとに糸を引っ張る力がいる。「面」は穴を開け、金具と布地をひもできつく結ぶため、ベテラン職人は指の関節が変形するという。
2014年、市内の別メーカーから分かれて創業した。40~60代の職人が全員女性なのは意図したわけではないが、山村星子取締役管理部長(47)は「作業が繊細で、男性とは違った感性もある」とアピールする。
元々、久慈の縫製工場には女性作業員が多い。市によると、かつて男性は漁や出稼ぎで外に出て、女性は裁縫をなりわいにしたのが由来だ。熱心で丁寧な仕事が注目されて1970年代ごろから工場が集まり、現在は9社が操業している。
七星では注文を受けると、体の部位ごとに細かく採寸する。この手間により、竹刀を力強く握ったり、振り上げたりする動作がスムーズになる。布を重ねることで打突などの衝撃を和らげると同時に、柔らかさを保つための縫い方なども工夫した。「痛みやけがで剣道を嫌いにならないように」との思いがこもっている。
全て国産素材を使い、染色も日本伝統の藍染。注文の9割はオーダーメードで、納品までは2カ月~半年ほどだ。
愛用者からは「動きやすい」「竹刀が走る」と声が寄せられ、最近は中国や韓国からも注文がある。山村さんは「剣道は自分と向き合うスポーツ。道具が技術や精神面の支えとなり、剣道をやって良かったと思える一瞬を支えたい」と語った。
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