島民生活80年近く支えた発電所廃止へ 三重県鳥羽市、「さみしい」と惜しむ声
共同通信 / 2024年7月27日 11時41分
三重県鳥羽市の離島「神島」の人々の生活を、80年近くにわたり支えてきた小さな火力発電所が廃止される。2005年まで島の電気を賄い、その後は、海底ケーブルによる本土からの送電が止まった場合の予備電源の役目を果たしてきた。来年3月以降に解体が予定され、関係者からは「さみしい」と惜しむ声が上がる。電力会社はケーブルを増設し、島への安定供給に万全を期す。(共同通信=大貫紗英)
発電所を保有する中部電力パワーグリッド(PG、名古屋市)は、発電機の修理用部品の入手が困難なことなどが廃止の理由だと説明している。発電所で約40年働いた小久保知明さん(80)は5月24日、19年ぶりに発電所内を訪れ「最後に中を見られてよかった」と名残惜しそうに見つめた。
神島は鳥羽港の北東約14キロの伊勢湾に位置し、現在は約280人が住む。市が運航する定期船が1日4往復し、釣りを楽しむために訪れる人も多い。また三島由紀夫の恋愛小説「潮騒」の舞台として知られ、三島が実際に執筆した民家が残るなど観光資源も豊富だ。
発電所は、1947年に地元漁協が発電機3台を設置したのが始まりという。中部電PGに分社化する前の中部電力が1964年に無償で譲り受け、発電機の取り換えなどで出力を増強してきた。現在の燃料は軽油という。
設置当初は日没から数時間しか電気が持たず、漁協で組合長を務めた藤原喜代造さん(87)は「幼い頃、電気が消えそうになると『頑張れ、頑張れ』と応援していた」と振り返る。島民の生活と漁業に長年貢献した発電所に「ご苦労さんと声をかけたい」と話した。
発電所で働いていた小久保さんが一番きつかったのは、20代のお盆の頃に発電機のエンジンが壊れて停電したことだった。所内に残るエンジンに「懐かしい」と目を細めた。
中部電PGは発電所の廃止に先立ち、今年3月に海底ケーブル増設工事を開始。7月に完了した。広報担当者は「設備の老朽化や将来的なコストも考慮した。これまで以上に安定した電力供給を行う」と話した。
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