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シンガポールに世界遺産風の巨大土楼 ルーツの中国福建省に敬意、内側は…

共同通信 / 2024年10月6日 7時4分

シンガポールの高級住宅街の一角にある「客家土楼」と運営する豊永大公会メンバーら=2024年7月(共同)

 1棟数十億円はくだらないシンガポール有数の高級住宅街を抜けると、突然、円形の大きな建築物が現れた。客家(はっか)土楼だ。中国福建省の山岳地域で、外敵から身を守り一族が集住する伝統的な集合住宅に似ている。よく見ると、土壁ではなくコンクリート製だ。世界遺産にも指定された土楼に似せた建築物が、なぜシンガポールにあるのか。(共同通信シンガポール支局 角田隆一)

 内側をのぞくと、バウムクーヘンのような円筒形の土楼の中庭に3階建ての納骨堂が立っている。「(縁起が悪いと)高級住宅街から隠すために建設した」。納骨堂を運営する豊永大公会のリュウ・シャウホンさん(53)が説明した。

 1840年に設立された豊永大公会は、中国福建省・広東省の3地域に先祖を持つ客家の墓地や納骨堂を管理してきた。この土楼は先祖の文化に敬意を示す意味も込め、2015年に完成したという。

 客家とは独自の方言を持つ漢族の一派。さまざまな王朝や民族が覇を競い、戦乱が続いた黄河中流域から各地に移り住んだ。19世紀以降、中国南方からの移民が形作ったシンガポールでは方言別で福建系、広東系などが多く、客家はこれらに次ぐ規模とされる。客家出身の地元研究者は「先行した福建系などが金融や貿易を抑え、貧しかった」と話す。

 シンガポールでは英植民地時代に社会福祉が望めず、教育や事業支援、葬祭を担う多数の互助団体が形成されてきた。客家系だけで約30あるという。豊永大公会のホー・チンティアンさん(68)は「(政府の福祉が充実し)今や文化振興が活動の中心だ」と指摘する。

 ただ英語と中国標準語を教育の柱に据えるこの国では方言や文化は廃れ気味だ。「子どもは客家語をしゃべることはできないし、活動にも興味がない」(リュウさん)

 団体によっては父祖の地の旅行に補助金や、中国本土の客家出身起業家との交流を企画し、機運を盛り上げる。ホーさんは「千年以上続いた文化を次世代に引き継がなければならない」と語った。

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