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和楽器が奏でる伝統の音色、後世に 滋賀県企業、切れにくい絹の弦を開発

共同通信 / 2024年10月13日 17時3分

開発した絹弦を手にする丸三ハシモトの橋本英宗社長=8月、大津市

 三味線や琵琶といった和楽器に付ける弦の材料は、伝統的な絹糸から効率的に生産できる化学繊維に変わりつつある。そうした中、滋賀県長浜市の和楽器弦製造「丸三ハシモト」は、絹糸で作った弦(絹弦(きぬげん))特有の音色を後世に残そうと、従来品よりも耐久性を高めた絹弦を開発した。2025年1月から販売を始める。(共同通信=岡田篤弘)

 茨城県つくば市の農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)も開発に協力した。丸三ハシモトによると、絹弦は澄んだ音色で大きなコンサートホールでも響きやすい。ただ摩擦で演奏中に切れることがしばしばあった。演者の不安を聞き、数年前から強化を模索してきた。

 丸三ハシモトの4代目社長橋本英宗(はしもと・ひでかず)さん(50)は2022年、農研機構が絹糸の原料となる繭を長年研究していることを他の伝統産業で働く人の紹介で知り、連携することにした。

 農研機構は繭の強度が高いカイコの個体を選抜し育成。丸三ハシモトと共同で、生産力も高めた三味線用の絹弦を協力開始から2年で完成させた。弦の耐久性は従来品に比べて3割以上高く、音も響きやすいという分析結果が出たという。

 今回開発した弦は「寿糸極上響明(ことぶきいとごくじょうきょうめい)」と名付けた。三味線の三本ある弦のうち、最も細く切れやすい「三の糸」と呼ばれる絹弦に用いる方針だ。さらに三味線の他の弦や、琴や琵琶といった楽器にも導入したいという。

 橋本さんが絹弦にこだわるのは「化学繊維ではない音色を次世代に伝えたい」からだ。繭から糸を取り出す工程で使う水は、水道水だと糸がパサパサしてしまう。しっとりさせるため、毎朝近くの山で天然水をくむなど上質な絹糸作りに労を惜しまない。

 「手間をかけるからこそ、膨らみのあるクリアな音が出る」。ナイロンやポリエステルを使う方が効率的に生産できるが、自らのスタイルは「コストパフォーマンス(費用対効果)の追求と対極にある」と笑う。

 丸三ハシモトは近年、古琴などの絹弦を用いた伝統楽器のある中国などアジアの伝統楽器市場にも参入し、販路を広げている。橋本さんは絹弦から奏でられる明るい音色が次世代に響くことを願っている。

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