木製バットの技、若手継承 国内半数シェアの富山県南砺市
共同通信 / 2025年1月11日 7時4分
富山県南砺市でオーダーメード中心に木製バットを製造するエスオースポーツ工業では、県外出身の若者らが希少な「手削り」のバット職人として活躍している。入社10年になる佐藤瑞起さん(27)は「使った人から『握った時や打った時の感覚が思った通り』と言われるとうれしい」と話す。(共同通信=吉永美咲)
地元の「南砺バットミュージアム」の嶋信一館長(75)らによると、同市は全国で年約30万本生産される木製バットのシェア約半数を誇る。古くから培われてきた木工技術があったことなどから、大正時代に生産が始まった。最盛期の1960年代には国内シェアの約9割を占め約10社の工場があったものの、海外移転や金属バット需要の高まりなどもあり、現在は5社となった。多くは大手スポーツ用品企業の下請けなどをしているという。
エスオースポーツ工業は、大内弘会長(83)が1981年に創業。佐藤さんを含む職人3人が、主に大学や社会人チーム向けに年約1万本を生産している。
秋田県湯沢市出身の佐藤さんは、元々ものづくりが好きだった。「好きな野球にものづくりで関われたら」との思いからインターネットで調べ、南砺市でバットが手作りされていることを知った。2015年に高校を卒業し、同社に入った。
「最初は簡単そうに見えたが、初めて削った時は『本当にできるようになるのか』と心配になった」。バットはメープルやアオダモなどが原料で、工程は角材の乾燥に粗削り、手削り、磨きなどがある。入社後しばらく、作業の手伝いをしながら体で覚えつつ、空き時間に削る練習を積み重ねた。
グリップを削る時は特に集中し、縦回転のろくろで回しながらのみで形を整える。一度削るとやり直せないので0.1ミリ単位で調整。磨きも絶妙なさじ加減が必要だ。
兵庫県姫路市出身で同社代表取締役の中塚陸歩さん(35)は「すぐ手削りをやらせてもらえないからと1年で辞める人もいる中、本当に貴重な存在」と期待を寄せる。佐藤さんは「『この人に作ってほしい』と指名してもらえるようなバット職人になりたい」と表情を引き締めた。
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