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好待遇と誘われた女性、中国人の「妻」に ミャンマーで被害急増、絶望感が後押し

共同通信 / 2025年1月18日 8時4分

ミャンマーの女性が中国人の「妻」として売られる被害の実態を説明するミャーミャータンさん(左)と被害女性ら=2024年12月、ヤンゴン近郊(共同)

 内戦状態のミャンマーで人身売買の被害が急増中だ。隣国・中国での高収入に憧れる若い女性らが「好待遇の工場労働」などに誘われて国境を越え、中国人男性の「妻」として売られるケースが多発。軍事政権の長期化と経済の悪化で絶望感を募らせる若者らは危険を承知で中国に向かい、被害に遭っている。(共同通信ヤンゴン支局=木村一浩)

 ▽35万円で買った

 スーミャットウィンさん(22)は最大都市ヤンゴン近郊の村に暮らしていた。フェイスブックで知り合ったブローカーの男に「中国の電球工場で働かないか。月給は80万チャット(実勢レートで約2万8千円)だ」と誘われた。

 ヤンゴンで調理師として得る月収の5倍。友人3人とすぐに渡航を決めた。2024年2月ごろ、ブローカーと一緒にバスで国境のシャン州ムセまで行き、渡された書類で越境し中国・雲南省の瑞麗市に入った。

 すると様子が一変した。病院で検査を受けさせられた後、中国人の男に引き合わされた。無理やり車で重慶市まで連れて行かれ、その男に「妻」となるよう強制された。「おまえは1千万チャット(同約35万円)で買った」。数週間後にすきをみて逃走し、警察に駆け込んだ。帰国できたのは2024年4月だった。

 ▽どうにでもなれ

 「彼女のような被害者が急増している。短期間で帰国できた彼女は幸運だ」。人身売買被害者を救済する市民組織の代表ミャーミャータンさん(61)は、2021年2月のクーデター後、担当する被害者の数は月10~20人から40人以上になったと話す。

 軍政下で徴兵制など圧政が強まり、経済は悪化し続けている。ミャーミャータンさんは「将来への絶望」が被害拡大を招いていると指摘する。「若者たちはリスクを気にせず『どうにでもなれ』という気持ちで中国に向かうようになった。だから悪質なブローカーに狙われる人も増えた」

 2015年に被害に遭ったキンモーエイさん(38)は、雲南省で「夫」らとの生活を約1年間も強いられた。「中国人がミャンマー人妻を求めるのは、中国人女性と結婚するより安く、望み通りに子どもを産んでくれるから」だと話す。

 軍政は事態を重視し、中国国境に向かうバスは運行が停止された。それでも渡航を目指す若者は増え続けている。

 ヤンゴンのバスターミナルで現地スタッフを通じ「中国国境に行きたい」と尋ねて回ると、ある業者から「通常とは異なるルートになるが、必ず送り届けます」との答えが返ってきた。待合室では何人もの若者が出発を待っていた。

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