迷うことにも意味がある
共同通信PRワイヤー / 2024年6月13日 14時0分
B 迷いなし又は迷いありの学習におけるハンドルの動きに掛かる邪魔する力のパターン
実験2でも、被験者にロボットハンドルを握って装置の前に座ってもらい、画面の中心に表示される多数の点の動きが、全体として右に動いているのか、左に動いているのかを判断させ、同じ方向に動かしてもらいました。迷いなく判断できる動きを表示(同期率100%)した場合は、反時計回り方向の邪魔する力が掛かり(図4B上参照)、迷わせる動きを表示(同期率3%)した場合は、時計回り方向の邪魔する力が掛かります(図4B下参照)。
その結果、被験者は、「迷いのない判断」の後の運動と「迷いのある判断」の後の運動の二つを同時に学習することができるようになりました(図4A右参照)。これは、運動の前の迷いの有無が、運動を区別するための手がかりとなるため、それぞれの邪魔に対して別々に対抗する力を学ぶことができたからです。
つまり、運動する前の迷いは、その後の運動を別々のものとして「タグ付け」しているといえます。
今後の展望
スポーツ場面では、いつでも同じパフォーマンスを発揮するために、「迷うな!」という指示が飛ぶことがあります。しかし、今回の研究結果では、脳は、むしろ迷いを受け入れ、迷いに応じた運動を作り出すことで、パフォーマンス低下を防いでいることが分かりました。つまり、現実場面で安定したパフォーマンスを発揮するためには、ただ単に目的の運動を達成するための練習に注力するのではなく、事前の意思決定状況とセットで運動を学習する必要があることが示唆され、新たなスポーツ等の指導方法につながります。
本研究の一部は、日本学術振興会(科研費: 20H00107, 21H00314)及び国立研究開発法人科学技術振興機構(ERATO: JPMJER1801)の助成を受けて行われました。
掲載論文
掲載誌: Nature Human Behaviour
URL: https://www.nature.com/articles/s41562-024-01911-x
DOI: 10.1038/s41562-024-01911-x
掲載論文名: Decision uncertainty as a context for motor memory
著者名: Kisho Ogasa, Atsushi Yokoi, Gouki Okazawa, Morimichi Nishigaki, Masaya Hirashima, Nobuhiro Hagura
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