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ナノ材料のマルチモーダル計測法を開発

共同通信PRワイヤー / 2024年6月26日 14時0分


研究の経緯

産総研は、ナノ材料の構造分析を高度化する計測法の開発を進めています。その中で、放射光X線を用いた分析技術の開発を進めており、X線分光素子の開発を進めてきた東京学芸大学と共同で、放射光X線から作り出した波長分散集束X線を用いた表面X線回折計測の高速化により、電極表面の構造変化を原子スケールで追跡する技術を開発しました(2017年10月25日 産総研プレス発表)。今回、この波長分散集束X線を利用した新しいマルチモーダル計測技術を開発し、ナノ材料のナノスケール構造と原子スケール構造の同時かつ高速な観察を実現しました。


なお、本研究開発は、独立行政法人 日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金(20K21137)「波長分散型小角X線散乱法の開発とナノスケール構造・局所原子配列構造の同時高速観察」(2020~2022年度)による支援を受けています。


研究の内容

今回開発した計測法は、波長分散集束X線を用いて、X線吸収スペクトルとX線散乱を同時に計測する技術です(図1)。X線吸収スペクトルの計測から原子間距離や配位数や化学状態、X線散乱の計測からナノ材料のサイズや形状を知ることができます。従来は、これらの計測は個別に行われていました(図1左)。本研究では、これまでに開発していたX線分光素子技術に加え、今回新たに開発した2次元検出器を用いた一括測定法と、波長分散集束X線による複雑なX線散乱分布を解析する技術により、X線吸収スペクトルとX線散乱の同時かつ高速な計測が初めて可能となりました(図1右)。


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202406242609-O2-oHaMQIjl


本技術による同時計測を実証するために、燃料電池に用いられる、パラジウム(Pd)を白金(Pt)で被覆したナノ粒子触媒の分析を行いました。図2左上に検出器上の画像を示します。画像の下部に見えるライン状の信号はX線吸収スペクトル(図2左下)に相当します。本計測法では、X線エネルギーのスキャンを省略できるため、高速な計測(ここでは、0.1秒)が可能です。また、検出器画像の上部に広がったX線散乱分布について、新規開発した解析技術を用いて回帰分析を行い(図2右上)、ナノ粒子のサイズとその分布、およびPt被覆層の厚みを抽出しました。このようにして、0.1秒の測定時間で、X線吸収スペクトル(図2左下)とX線散乱分布(図2右上)、つまり原子スケールとナノスケールの情報を同時に取得できることを示しました(図2右下)。これは、昨年報告された高速に交互計測する方法(参考文献1)に比べ、数十倍以上高速です。

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