0.9 V以下の電解電圧で水から水素を製造する手法を実証
共同通信PRワイヤー / 2024年11月5日 14時0分
光触媒を用いた経済合理性のあるグリーン水素製造技術の実現に向けて
ポイント
・ 高性能を維持できる光触媒のシート化手法を開発
・ 本手法に用いた可視光応答性光触媒が10000時間以上の疑似太陽光照射でも劣化しないことを確認
・ 光触媒と電解を組み合わせた、水素と酸素を分離製造可能な水分解用小型流通型装置の屋外実証に成功
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202410319198-O1-I9mk0CzE】
概 要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)ゼロエミッション国際共同研究センター 人工光合成研究チーム 三石雄悟 主任研究員、佐山和弘 首席研究員は、グリーン水素を安価に製造できる可能性を秘めた光触媒-電解ハイブリッドシステムの流通型装置を開発し、水分解の理論電解電圧(1.23 V)よりも小さい0.9 V以下の電解電圧で水素と酸素を分離製造できることを実証しました。さらに、本装置に用いた酸化タングステン(WO3)系光触媒の性能が10000時間以上の光照射実験後にもほぼ維持されていることも確認できました。
なお、本成果は2024年10月25日に「ACS Applied Materials & Interfaces」にオンライン掲載されました。
下線部は【用語解説】参照
※本プレスリリースでは、化学式や単位記号の上付き・下付き文字を、通常の文字と同じ大きさで表記しております。
正式な表記でご覧になりたい方は、産総研WEBページ(https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241105/pr20241105.html)をご覧ください。
開発の社会的背景
燃やしてもCO2が排出されない水素は、カーボンニュートラルのキーテクノロジーとして、幅広い分野での活用が期待されています。水素はその製造法に応じて色分けされますが、太陽光や風力などの再生可能エネルギーから製造されるグリーン水素は、脱炭素化への大きな貢献が期待されています。しかしながら、電力コストが高いために、主に電解で製造されるグリーン水素は他の手法より製造コストが高くなります。
研究の経緯
産総研は、グリーン水素の製造コストを削減するための候補技術として、“光触媒-電解ハイブリッドシステムによる水分解法”を研究しています。この手法では、水を酸素へ酸化しながらFe3+イオンをFe2+イオンへ還元する光触媒反応と、Fe2+イオンをFe3+イオンへ酸化しながら水を水素へ還元する電解反応とを組み合わせることで、全体反応として水素と酸素を別々に製造できる水分解が進行します。前段の光触媒反応では、光エネルギーが鉄塩水溶液中に化学エネルギーとして貯蔵されます。後段の電解では、その貯蔵された化学エネルギーを水素製造のためのエネルギーとして利用できるため、必要となる電解電圧が、通常の水分解で必要となる値(1.23 V)と比較して小さくなります。その結果、水素製造に必要な電力消費量を削減できる特徴があります。産総研は以前に、可視光応答性のWO3光触媒の反応速度を向上できる表面処理手法を開発し、前段の光触媒反応の効率を10倍以上に向上させました(2010年3月11日 産総研プレス発表)。しかしながら、光触媒反応は光触媒粉末を懸濁させた反応溶液へ光を照射することで評価しており、実際に後段の電解と組み合わせ、光触媒で製造したFe2+イオンを効率よく消費しながら水素を低電圧で製造する全体システムのイメージがありませんでした。今回は、光触媒-電解ハイブリッドシステムによる水分解法の長所を生かせる流通型の全体システムを開発することで、光触媒の反応効率に対応した量の水素を少ない電力消費量で効率よく製造できることを実証しました。
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