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「吊るさない点滴」が医療機器に

共同通信PRワイヤー / 2024年11月13日 14時0分


開発の経緯

産総研では、国家計量標準機関として時間・長さ・質量などの国が整備すべき計量標準の開発と供給を行っています。今回の研究チームは、流量についての計量標準の開発と供給に従事する傍ら、関係する計測・評価技術の開発と高度化を行い、さまざまな形での社会実装を目指しています。


医療現場から入江工研を通じて、産総研に寄せられた「点滴による、トイレや食事等における生活の不自由を減らしたい」という要求をきっかけに、産総研の強みである流体制御と計測技術、入江工研が得意とする真空技術を融合して「吊るさない点滴」という新たなコンセプトを実現するための研究開発を開始しました。


「吊るさない点滴」実現のためには、重力に頼らず、能動的に輸液に圧力を付加しなければなりません。しかし、その駆動力を電気に頼っていては、災害時における使用が困難になります。そこで、真空ピストンシリンダーを用いて生じた、大気と真空の圧力差を利用することにしました。


安定した投与量の点滴は、患者の治療効果の最大化と安全安心にとって重要です。そのために、真空ピストンシリンダーにより発生した駆動力をいかに輸液バッグ内の薬液に安定した圧力として伝達するかは、大きな開発課題でした。[1]


課題の克服

当初試作した寝袋型の空気バッグでは、吐出開始当初は輸液バッグからの吐出量が安定したものの、重力による吊り下げ点滴と同じ吐出性能に到達できませんでした(図1)。そこで、原因究明のために、加圧用の空気バッグと、圧縮空気自体のそれぞれの作動効果に着目し、それぞれ別の実験系で評価しました。圧縮空気のみの作動効果を調べるために、直接輸液バッグの表面に圧縮空気を加えながら、輸液バッグからの点滴吐出量を取り出せるような特殊な密閉容器を設計製作しました。評価の結果、寝袋型の空気バッグを使用した場合よりも、圧縮空気のみの場合の吐出性能は上回りましたが、依然として重力による吐出性能に届きませんでした。その原因は、圧縮された輸液バッグの表面に皺が生じることで、内部の薬液に圧力が効果的に伝達されないためであることが判明しました。[2]


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411129748-O2-8Oen9i98


輸液バッグの表面皺が吐出性能の妨げになるので、いかに皺の発生なく輸液バッグを圧縮するかが、次の課題でした。輸液バッグの皺を伸ばすのは、空気バッグによる圧縮が有効であると考え、空気バッグの形状を見直しました。試作を繰り返し、辿り着いた形状は、分離した二つの空気バッグで輸液バッグを挟むようなサンドイッチ型空気バッグでした。サンドイッチ形状では、空気バッグと輸液バッグとの接触面を密着させながら、皺をサンドイッチの両外側に伸ばすことができるので、輸液バッグ表面に皺を生じさせることなく圧縮することが可能でした。そのため、空気バッグの圧力が効果的に輸液バッグ内まで伝わり、結果的に重力と同等な吐出性能を達成することができました(図2)。

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