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準結晶分野のデータ駆動型研究を促進する基盤データベース ―HYPOD-X―を公開

共同通信PRワイヤー / 2024年11月14日 12時30分


図1:HYPOD-Xを構成する三つのデータセットとデータ収集手順


 

 組成データセットは、準結晶と近似結晶に関する最も基本的な情報です。組成、構造分類、熱処理条件を含むデータは、専門家による厳密な検証を経てデータベースに登録されます。また、エラーデータの自動抽出アルゴリズムを適用することで、データの品質を向上させています。データの量は、準結晶の組成を整理した先行研究[1]の約10倍に上ります。さらに、同グループはこのデータセットを用いた機械学習により、新しい準結晶の発見に成功しています[2]。

 物性データセットには、論文や書籍の図表から抽出した熱物性や電気物性、磁気物性などの温度依存性曲線が含まれています。このデータを俯瞰することで、準結晶の専門家でも見過ごしていた新たな法則が発見されることが期待されます。例えば、準結晶では高温になるほど熱伝導率が上昇する傾向があります。これは通常の金属や結晶では見られない特性です。この特性を利用することで、熱の流れを特定の方向に制御する熱整流材料の開発が可能になります。膨大なデータから最適な温度依存性を示す準結晶を同定することで、新しい熱管理デバイスの開発を加速できます。

 相図データセットには、論文や書籍の図を数値化したデータが含まれています。このデータは準結晶や近似結晶が熱力学的に安定化する組成範囲やその他の条件を示しています。このデータに機械学習を適用することで、準結晶や近似結晶の新たな物質相を予測することが可能になります。


今後の展望

 HYPOD-Xは、準結晶分野においてこれまでにない規模のデータベースです。同グループは今後もデータベースを継続的に拡張していく予定です。現在、物質科学や材料科学の様々な分野でデータ駆動型研究の基盤整備が進められています。一方、準結晶分野には包括的なオープンデータが存在しなかったため、データ駆動型研究の発展が制約されていました。今回のオープンデータベースの整備により、今後は様々なデータ駆動型研究が展開されることが期待されます。また、大量のデータを俯瞰することで、準結晶研究に新たな視点や科学的法則をもたらすことが期待されます。


発表論文

タイトル: Comprehensive experimental datasets of quasicrystals and their approximants

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