新技術でCFRPから炭素繊維を加熱・薬剤レス、エネルギー効率10倍で回収
共同通信PRワイヤー / 2024年12月16日 11時5分
(4)課題、今後の展望
本研究で開発した電気パルス直接放電法は、CFRPのリサイクルにおいて多くの可能性を示しましたが、いくつかの課題が残されています。まず、1回のパルス照射で回収される炭素繊維の量が少ないことが挙げられます。このため、繰り返し照射を含むプロセスの最適化や、よりCFRP内部に効率的に放電を誘導できる電極構造の改良が求められます。
さらに、回収された炭素繊維の方向性が揃っていない点は、再利用プロセスにおける課題となっています。これを解決するためには、回収繊維を均一に処理できるプロセスの開発や、新たな用途への適用可能性を検討する必要があります。
また、現在の実験室規模から、産業的スケールへの拡大に際して効率やコストの検証が必要です。本技術を工業的にスケールアップする際には、現在使用している装置が特殊であることから、装置製造コストの低減や大規模処理への対応が重要です。この点について、装置の汎用性を高める設計や運用コストを削減する方法の検討が必要です。
(5)研究者のコメント
サーキュラーエコノミーを実現するためには、本研究で取り組んだような解体技術の高度化が必要不可欠です。これまでは破砕粉砕や人手による作業に依存していましたが、環境負荷を低減し、労働集約的でないプロセスを実現するには、従来の方法に代わる革新的な技術が求められます。本研究で提案した電気パルス直接放電法のような新たな外部刺激を利用した技術は、処理が困難な材料の前処理法として大きな可能性を秘めています。今後もこれらの技術を発展させ、資源循環型社会の構築に貢献していきたいと考えています。
(6)用語解説
※1 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)
炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastic:CFRP)は、強化材として炭素繊維と母材(マトリックス樹脂)としてプラスチックを複合してできる素材。炭素繊維が持つ「導電性・耐熱性・低熱膨張率・反応特性・自己潤滑性・高熱伝導性」といった特徴を兼ね備え、様々な用途へ幅広く使われる。
(7)論文情報
雑誌名:Scientific Reports
論文名:Efficient recovery of carbon fibers from carbon fiber-reinforced polymers using direct discharge electrical pulses
執筆者名(所属機関名):所千晴* (早稲田大学理工学術院)、佐藤啓太(早稲田大学大学院創造理工学研究科)、犬束学(早稲田大学カーボンニュートラル社会研究教育センター)、小板丈敏(早稲田大学理工学術院) *責任著者
掲載日時(現地時間):2024年11月30日(土)
DOI:https://doi.org/10.1038/s41598-024-76955-0
(8)研究助成
科研費 基盤研究B 電気パルスを外部刺激とした高選択性分離技術確立のための機構解明 所千晴(早稲田大学)23K25037
関連URL:https://kyodonewsprwire.jp/release/202412131632
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