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金属酵素の活性制御を応用して人工細胞の運命制御に成功

共同通信PRワイヤー / 2024年12月24日 10時0分


 一方、3種類のイオノフォアを同時に細胞膜に結合させると、いずれの金属イオン輸送も抑制されることが明らかとなりました。分子動力学 (MD) シミュレーション注4 の結果、細胞膜内でイオノフォア間に相互作用が働くことで細胞膜内での移動が抑制され、金属イオン輸送を妨げている可能性が示唆されました。さらに、3種類のイオノフォア (A, B, C) を異なる順序で細胞膜に結合させると (例: A→B→C、B→A→C など)、後から細胞膜に結合したイオノフォアに対応する金属酵素の活性化レベルが顕著に低下することを発見しました (図2)。すなわち、細胞膜に結合するイオノフォアの順序が金属酵素の活性化レベルに影響を与えることを発見しました。以上より、開発した人工細胞においてイオノフォアが細胞運命の決定因子として機能し、最初に活性化された金属酵素が人工細胞の運命を定め、他の経路の活性化を抑制する仕組みが実証されました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202412202086-O6-v7WOQ02A

図2. イオノフォアが人工細胞の運命を決定する a) 3種類のイオノフォアを同時に細胞膜に結合させると、いずれの金属イオン輸送も抑制される。 b) 3種類の金属酵素を内包させた人工細胞に金属イオンを外部に共存させた状態から20分おきにイオノフォアをA, B, Cの順序で細胞膜に結合させた時の蛍光顕微鏡画像。pHセンサーの蛍光強度はイオノフォアAの膜結合後、顕著に増加が見られた。一方、その後のイオノフォアBによる膜結合ではH2O2センサー蛍光強度の増加が図1bに比べて顕著に低い。さらに最後にイオノフォアCによる膜結合ではCa2+輸送で細胞膜分解が誘導されるはずであるが、橙色で示される蛍光色素 (Sulfo-Cy5) の蛍光強度に減少が見られないことから、ほとんど誘導されていない。


【今後の展開】

 開発した人工細胞は、外部刺激 (金属イオン) を細胞内部に届けるトランスポーター (イオノフォア) の選択によってのみ異なる機能を発現するシステムです。実際の細胞では、細胞膜に多種多様な膜タンパク質が発現した状態から外部刺激が入力されることで細胞は特定の反応を示すため、厳密に言うと実際の細胞と開発した人工細胞では外部刺激に対する応答方法が異なります。しかし、異種イオノフォア (AとB, AとC など) が細胞膜内で互いに金属イオン輸送を妨げるという新たな発見により、細胞膜へのイオノフォアの結合順序が人工細胞の運命を左右するというさらなる発見にもつながりました。ある機能が発現すると同時に潜在的に持つ他の機能発現が抑制されるこの現象は、細胞の初期状態である多能性幹細胞注5 の細胞分化で見られる制御機構と類似するという見方もできます。したがって、細胞分化を模倣した『多能性人工細胞』の設計に本研究が重要な指針を与えることが期待されます。

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