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社説:大学発の新興企業 京滋から世界へと育てたい

京都新聞 / 2023年7月2日 16時0分

 先日の本紙経済面に大きく、二つの京都大発スタートアップ(新興企業)が大手企業と手を組むとの記事が載った。

 ゲノム編集技術で魚の品種改良を進めるリージョナルフィッシュ(京都市左京区)は、食用部分が通常より多い「肉厚マダイ」や、海水温が2度高くても生息できるヒラメなどを開発。環境・食料問題に取り組むNTTと合弁会社を作り、養殖・販売を広げるという。温暖化などで漁獲高が減る中、新たな養殖魚の展開が注目されよう。

 エネコートテクノロジーズ(京都府久御山町)はトヨタ自動車と共同で、電気自動車(EV)向けの次世代太陽電池を開発する。エネコートが開発済みの太陽電池に磨きをかけ、トヨタが実用化へと加速させるようだ。将来的には充電不要のEVが登場するかもしれない。

 京都ではおとといまで、国内外のスタートアップや投資家が集まる国際イベントも開かれた。こうした動きが、日本経済を押し上げる萌芽(ほうが)となり、大きく育つことを期待したい。

 スタートアップは革新的な技術やサービスを開発し、新たな市場の開拓を目指す創業まもない企業を指す。和製英語のベンチャー企業とほぼ同義だが、米国で急成長したIT企業などの呼び名が、日本でも普及した。

 経済産業省が先月公表した大学発スタートアップ(ベンチャー)の設立状況調査では、京大が267企業に上り、371企業の東京大に次いだ。

 12位に立命館大(110企業)、19位に龍谷大(45企業)と滋賀に理系キャンパスを持つ大学が入った。以下、100位以内に同志社大、京都工芸繊維大、京都府立大もみえる。京滋の大学の活躍は頼もしい。

 京都はかつて「ベンチャーの都」と呼ばれ、大学や伝統産業といった独自の集積を背景に、先端技術が生まれ、世界的なメーカーが幾つも育った。

 ただ、近年は停滞気味だ。京都に限らず、「ユニコーン」と呼ばれる時価総額が10億ドル(約1400億円)で設立10年未満の企業は、米国の600社に対して日本は10社に満たない。

 基礎研究を実用化研究につなげる困難を「魔の川」、実用化研究から製品化に至る間を「死の谷」、製品が市場で生き残るための競争は「ダーウィンの海」と呼ばれる。折々に的確な支援が欠かせない。

 岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」では、スタートアップ育成5カ年計画を作り、ユニコーン100社創出を目標に掲げた。課税負担の軽減や育成拠点の創設、研究開発へ助成1千億円超などを打ち出す。

 だが、これで国内外から必要な人材や資金を集める環境が整うのか。地域の特性を生かし、大学や自治体、海外人材の活動を後押しするなど、腰を据えた大胆な取り組みを求めたい。

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