社説:高浜原発再稼働 老朽の不安拭えぬまま
京都新聞 / 2023年8月3日 16時5分
数々の懸念を置き去りにしたままではないか。
関西電力は、高浜原発1号機(福井県高浜町)を12年ぶりに再稼働させた。1974年11月の運転開始から48年たつ国内で最も古い原発だ。2011年の東日本大震災の2カ月前、定期点検で停止して以来である。
東京電力福島第1原発事故を受け、原発の運転期間は「原則40年」と定められた。例外として1回限り20年の延長を認める規定を使い、40年を超えて稼働するのは21年の美浜原発3号機に続いて2例目だ。
岸田文雄政権は昨年、エネルギーの安定確保や脱炭素を理由に「原発の最大限活用」を打ち出した。事故後に「原発依存を可能な限り低減する」としてきた政府方針の大転換で、既存原発の再稼働を加速させている。
だが、福島事故があらわにした原発の安全面や住民避難などの根本的課題は解決しておらず、「回帰」に突き進むのは危うい。
運転期間ルールは、老朽化のリスクの低減を考慮したものだ。原発設備は放射線でもろくなりやすく、停止中も経年劣化が進む。40年以上前の設計は古く、交換できない心臓部の圧力容器などの限界は予測が困難とされるからだ。
岸田政権は今年5月、さらに60年超の運転も可能にする法律を成立させた。原則40年の枠組みのまま、延長時に安全審査などに伴う停止期間を除外できるとした。
だが、安全性の確認方法の具体化は先送りされて国会審議は深まらず、老朽原発を使い続けることへの不安は拭えないままだ。
重大事故が起きた際の周辺住民の避難対策も大きな懸念材料である。高浜1号機から半径5キロ内は舞鶴市の一部が含まれ、同30キロ圏は高島市にまでかかっている。
9月には、運転開始47年の高浜2号機も再開を予定し、福井県内で計7基が稼働することになる。狭い道路の被災や渋滞、雪の影響などで計画通り避難できるか、実効性が不安視されている。
使用済み核燃料も行き場がなく、高浜原発の燃料プールはあと約5年で満杯になるという。関電は今年中に中間貯蔵施設の県外候補地を確定させると約束してきたが、先月に貯蔵量の5%をフランスに搬出する計画を示した段階だ。後始末のめどを付けぬまま、再稼働で増やし続けるのは無責任である。
未曽有の福島事故の教訓を忘れたかのような政府や関電の振る舞いは、国民の不信を深めるばかりではないか。
外部リンク
この記事に関連するニュース
ランキング
-
1「石丸伸二を支持する人」の熱が冷めてきた事情 小泉純・橋下両氏に並ぶ「SNS時代」のトリックスター
東洋経済オンライン / 2024年7月17日 8時40分
-
2貯金ゼロの貧乏ママが“資産1億円”を達成するまで。1日14時間以上の勤務に疲れ果て「これは続けられない」
日刊SPA! / 2024年7月17日 8時52分
-
3高速バスが国道の左カーブで道路逸脱 病院搬送された乗客5人は全員意識あり 北海道滝上町
HTB北海道ニュース / 2024年7月16日 23時42分
-
4鍵握る維新対応、狭まる「斎藤知事降ろし」包囲網 第三者機関の結論焦点に
産経ニュース / 2024年7月16日 20時24分
-
5近隣住民にクラクションや大声440回、PTSD発症させる…男を傷害容疑で再逮捕
読売新聞 / 2024年7月17日 6時34分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)