社説:原爆の日 核廃絶へ日本の責務果たせ
京都新聞 / 2023年8月6日 16時0分
広島はきょう、長崎は9日に、78回目の「原爆の日」を迎える。
今なお核の脅威は世界を覆い、あまつさえ高まっている。
ウクライナに侵攻したロシアは、隣国ベラルーシに新たに戦術核を配備した。ウクライナの反攻に、核兵器使用をちらつかせて威嚇を強めている。
今年5月、被爆地広島で先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)が開かれた。ウクライナのゼレンスキー大統領も出席し、核兵器保有国の米英仏3カ国を含む首脳たちが、核兵器の惨禍を伝える広島市の原爆資料館を見学した。ヒロシマの実相に触れた意義は認められる。
ただ、その上でまとめた首脳声明では、「核兵器のない世界」を究極目標としたものの、ロシアの核の威嚇、使用に反対を打ち出すにとどまった。
核軍縮には「現実的で実践的、責任あるアプローチを取る」とし、「安全が損なわれない形で」との条件を付けて核抑止力を正当化した。「広島ビジョン」という名から期待された、核廃絶への道筋は開けなかった。残念でならない。
非保有国60カ国以上が批准する核兵器禁止条約には、全く言及しなかった。
G7を含む20カ国・地域(G20)が昨年11月、「核兵器の使用と脅しは許されない」と明記し、核のリスク低減を強調したバリ宣言からも後退した、とみられても仕方あるまい。
共同通信の被爆者アンケートによると、各国首脳の原爆資料館見学などを約7割の人が評価する一方、広島ビジョンに対しては核兵器を「絶対悪」と捉える被爆者の思いに沿っていないと失望を示した。
岸田文雄首相は核保有国と非保有国の「橋渡し役」を自任しながら、米国の核の傘への依存を強め、核兵器禁止条約に背を向け続けている。広島ビジョンが画餅でないというなら、主体的に条約の輪に加わるべきだ。
2026年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の準備委員会が、オーストリアで開かれている。昨年の会議では、ウクライナを巡る記述にロシアが反対し、15年の会議に続き最終文書を採択できなかった。
核のさまざまな問題に世界が向き合う唯一の場であるNPTが、機能不全に陥っているのは看過できない。
唯一の戦争被爆国として日本は、保有国への働きかけを強め、体制の立て直しに尽力する責務があろう。
被爆者の平均年齢は、85歳を超えた。高齢化で、健康不安を抱える人は少なくない。
政府は昨年4月、原爆投下直後に降った「黒い雨」被害の救済範囲を拡大し、被爆者認定で新基準の運用を始めた。
被爆者に残された時間は多くない。再び核の悲劇が繰り返されぬよう、教訓と思いを引き継いで伝え続けねばならない。
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