社説:ノーベル医学賞 コロナ収拾に貢献した
京都新聞 / 2023年10月4日 16時5分
今年のノーベル生理学・医学賞に、新型コロナウイルスのワクチン開発研究に多大な貢献をした2人の研究者が決まった。
ともに米国ペンシルベニア大を拠点とするカタリン・カリコ氏とドリュー・ワイスマン氏で、メッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれる遺伝物質をワクチンに応用する技術に道を開いた。
新型コロナウイルスが拡大する中、製薬会社はカリコ氏らが生み出した技術を応用し、過去に例のない早さでワクチンを開発し、世界中に供給した。
この技術がなければ、地球規模のコロナ感染拡大はまだ続いていたのではないか。パンデミックの収拾への貢献は、まさにノーベル賞に値する業績といえよう。
従来のワクチン製造は、ウイルスそのものを弱毒化したものや、ウイルスを鶏卵の中で培養して精製する方法などがとられていた。
一方、カリコ氏らは、病原体の遺伝情報を載せたmRNAを利用する方法に着目した。
原理的には1980年代から唱えられていた方法だが、mRNAは体内に取り込まれると簡単に壊れてしまうことや、過剰な免疫反応が起きることが課題とされていた。
カリコ氏らはmRNAの一部を改変して免疫反応を抑え、安全性を高める技術を発見した。
mRNAを使うことでワクチン製造や安全性確認が格段に早まり、大量生産も可能になった。
ウイルスの変異にも速やかに対応できる点も、これまでにない進歩だ。他のウイルスや疾病への応用研究も始まっており、将来性も大いに期待されている。
ハンガリー出身のカリコ氏は母国で研究職を失い85年、家族とともに渡米し、ペンシルベニア大で研究ポストを得た。カリコ氏を迎え入れ、ともに研究を続けたのがワイスマン氏である。
カリコ氏は渡米後の2005年、今回の授賞対象であるmRNA技術の端緒を発見し、論文として発表したが、当時はほとんど注目されなかった。
性別や国籍、出身地などにかかわらず、いかに将来性のある研究者を見い出し、継続して支援を続けられるか。2人の歩みから得られる教訓だろう。
日本は研究支援の方針に「選択と集中」を掲げているが、その中で多くの貴重な「原石」を見捨てていないだろうか。
2人に賞を贈ることを決めたノーベル財団の決定から、学ぶ必要がある。
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