地元の竹で「地産地作」を 高校講師が退職後に見つけた夢は
京都新聞 / 2023年10月17日 8時0分
幅数ミリの竹ひごで形作られる無数の六角形。繊細な指の動きで角度をつけ、編み方を変えれば、平面から立体に。茶道具やかばん、ランプなどを形作っていく。「地元京丹波の竹を使い『地産地作』を実現したい」。小林道幸さん(64)=京都府京丹波町=は、昨年4月から竹細工職人として歩み始めた。
同町蒲生の出身。須知高卒業後、大阪芸術大で造園を学んだ。卒業後に入社した建設コンサルタント会社で、学校や新興住宅地の緑地化など、外構工事の設計に5年携わった。
独立を見据え始めた頃、知人から「農芸高(京都府南丹市)の講師をやらないか」と誘いを受けた。「1年だけのつもりで」引き受けたが、22年もの長きにわたり、草花の成育や作庭、土木を教えた。「会社員時代に机上でやっていた仕事を実地でやることになった。大変だったが、勉強になった」と振り返る。
その後、退職までの12年間を過ごした須知高では、専門外の乳肉加工の担当に。ヨーグルトやアイスクリーム、ソーセージ作りなどにも挑戦した。
自身の希望や専門とは全く違う職場環境に戸惑い、しんどさを感じたことは何度もあった。それでも仕事を続けられたのは、妻恵美さん(61)の支えがあったから。「彼女がいなかったら、今の私の人生はない」
退職後について考え始めた時、京都伝統工芸大学校で学び、四国で工房を開いた竹細工職人の存在を知った。幅広く「もの作り」に関わってきただけに、身近な竹を使った工芸に心引かれるのに時間はかからなかった。
同校で3年学んだ後、同町高岡に自らの竹工房「倉吽(くらうん)」を立ち上げ、日々黙々と創作活動にいそしむ。今年6月には「舞鶴市展」に応募した作品が、工芸美術部門で最優秀賞に輝いた。
和紙やアクリルといった異なる素材を組み合わせた作品づくりや、ネットでの注文販売など、やりたいことはたくさんある。「京丹波町の『竹野』で作られたということに価値がつく、そんな作品が作りたい」
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