社説:外国人新制度 「定住」促す仕組みになるか
京都新聞 / 2023年10月29日 16時0分
政府の有識者会議が「外国人技能実習制度」に代わる新制度の試案を示した。
新制度は労働力確保を前面に打ち出し、来日して同じ産業分野で原則3年間働くための在留資格となる。一つの職場で1年以上働き、日本語能力があるなどの条件をクリアすれば、同じ分野で「転籍」を認める。
3年後には5年間の「特定技能1号」へ移行できる。さらに在留を希望する人には、在留期間の上限がない特定技能2号への道も開かれる。
技能実習制度は国際貢献を名目にしながら、転職を認めず、賃金不払いやハラスメントなど、人権侵害の温床との批判を受けてきた。廃止は当然だ。
今後は、同じ労働者、生活者として権利と環境が保障されるかが問われよう。
気になるのは、新制度にも、引き続き外国人材の権利や自由を制限する要素を残していることだ。
受け入れを「監理団体」が仲介し、働き先を指導・監督する枠組みは変わらない。
現制度では原則転籍も認められず、失踪が相次いだ。新制度下では職場を変わることができるが、働きやすさと権利保護の観点で実効性があるか、十分な検討が必要だ。
家族の呼び寄せは特定技能1号の期間が終わる8年後までできない。それまで単身を強要する国が、働き手にとって魅力的な環境に映るとは思えない。
新制度では、来日時に日本語能力試験を課す。特定技能のランクアップには、より上位の日本語試験の合格が必要となる。
一方で、現状では外国人労働者にとって地域で日本語をレベルアップする環境が整っているとは言いがたい。
外国人労働者を対象にした日本語教育は、外国人が集住する自治体が主に担っているのが実情だ。
有識者会議は「国の役割として日本語を学びやすくすることが大事」と指摘した。国は重く受け止め、早急に日本語習熟の体制を充実しなければならない。
転籍制限の緩和で「地方から都市部に外国人労働者が流出する」などといった懸念が早速出ている。
外国人を「日本人に代わる安価な労働力」と考えるなら、外国人労働者の流出は阻めまい。
外国人と企業を仲介する監理団体が正しく機能する必要がある。
監理団体の役員を労働者の受け入れ企業の役員が兼ねている実態が指摘されている。試案は、兼業の制限や外部弁護士による監視の強化を求めた。利益相反は不正や腐敗の温床になる。中立、独立性が不可欠だ。
就労、生活環境の両面で労働者をつなぎ止める努力が、これまで以上に企業や地域に求められる。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
人材不足の介護現場…外国人は「救世主」となるか、2028年までに13.5万人受け入れ目標、現状と課題に迫る
まいどなニュース / 2024年7月8日 19時0分
-
【登録支援機関担当者向け】新制度・育成就労制度に対応!登録支援機関のための日本語教育導入セミナーを開催いたします
PR TIMES / 2024年7月6日 12時40分
-
外国人労働者の働き方改革を支援!OneWorldTechnology社、新サービス『One World Support』で支援機関と監理団体の業務効率化を実現
PR TIMES / 2024年7月4日 10時45分
-
【インドネシア政府公認】技能実習生の費用負担を極小化する『IJCプログラム』受け入れ400名・実習内定350名突破、さらに360名受け入れ目標進行中
PR TIMES / 2024年6月26日 13時40分
-
JITCO、外国人技能実習制度に基づく、雇用環境の改善を促す事業を展開
PR TIMES / 2024年6月20日 18時45分
ランキング
-
1ゆれる兵庫県庁 「解明が務め」と百条委、「自分も処分?」と疑心暗鬼になる職員も
産経ニュース / 2024年7月19日 20時1分
-
2蓮舫氏は「都知事選で惨敗した人」で終わるのか…二重国籍問題以上に致命的な"政治家としての最大の欠点"
プレジデントオンライン / 2024年7月20日 9時15分
-
3<独自>事務所資金から香典か 堀井学衆院議員の配布疑い 裏金が原資の可能性も
産経ニュース / 2024年7月19日 18時16分
-
4コロナ「第11波」、変異株KP・3が主流 流行期入りで夏に感染拡大か
産経ニュース / 2024年7月19日 21時4分
-
5愛知・犬山市で死亡した7歳女児の全身に多数のあざ…一時保護時に「パンチされる」と訴え
読売新聞 / 2024年7月20日 5時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください