社説:グーグルに審査 健全な競争環境整えよ
京都新聞 / 2023年11月3日 16時0分
公正取引委員会が、独禁法違反の疑いで米IT大手のグーグルに対する審査を始めた。
グーグルのスマートフォン用基本ソフト「アンドロイド」を使う端末メーカーに対して、自社の検索サービスやアプリの搭載を優遇させ、競争を排除した疑いがあるとしている。
検索エンジンのシェアは、グーグルが他社を圧倒している。寡占状態による弊害に厳しい目を向けたといえよう。実態の解明が求められる。
公取委によると、グーグルはスマホの初期設定で自社のアプリストアの搭載と引き換えに検索アプリなどを採用させ、画面上のアイコンの場所も指定していたという。
競合他社のアプリを搭載しないことを条件に、収益の一部を分配する契約もあったとみている。
グーグルのアプリは広く普及しており、利用者には何が実害か分かりにくいが、公取委は「競争を難しくする行為は中長期的にみるとイノベーションを阻害し、消費者の不利益につながる」と指摘している。現時点で違反があったわけではないという。
グーグルは「端末をカスタマイズする選択肢を提供している」と主張しているが、影響力の大きい世界的企業の要求を拒否できるだろうか。審査に協力して主体的に説明し、社会的責任を果たすべきだ。
「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業に対しては欧米で規制強化の動きが先行している。
欧州連合(EU)は今年5月、IT企業が独占的地位を利用しないよう制限する「デジタル市場法」を施行し、自社サービスの優遇を禁じた。米国でも司法省がグーグルの契約を反トラスト法(独占禁止法)違反と訴え、9月に裁判所で審理が始まった。
生成AI(人工知能)の開発が急速に進み、検索サービスを巡る企業の競争は新たな局面に入ったとされる。特定企業による独占や寡占が加速しないよう、必要な規制を整えておく潮流に日本がどう対応するかが問われている。
今年に入り、政府はアプリストア運営の独占を禁じる新法の検討に動きだした。グーグルとアップルによる寡占状態を見直す狙いとみられるが、アップルはストアを開放すればアプリの安全性が低下すると反対している。
優越的な立場の企業が新規参入や消費者の選択を妨げることがないよう、健全な競争を担保する制度が求められる。
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