「赤ちゃんと帰る場を地域に」助産師の会代表 育児で孤立させない 懇談やランチの機会設け
京都新聞 / 2023年12月19日 13時13分
「木津ほのぼの助産師の会」代表の谷口貴子さん(51)=京都府木津川市=は、病院勤務や教員経験を経て、2015年に出張専門の助産院を始めた。「助産師の仕事は人に寄り添い、その人の力を信じて待ち続け、支えること」。保健指導や母乳ケア、相談など産前産後の女性に寄り添う。
助産師9人が集まり、「木津ほのぼの助産師の会」を立ち上げた。「出産を終えたママが退院した後、赤ちゃんと一緒に地域に帰る場所を作りたい」と語る。
助産師の会は2年目を迎えた。定期的に「産後ママのおしゃべり会」を開いて子育ての悩みや情報を共有する機会を広げている。始めたきっかけは新型コロナウイルス禍だった。自治体などから委託を受けて行う生後4カ月までの乳児を対象にした家庭訪問が、ほとんどできない時期もあった。人との接触を最小限にしなければならない状況が続く中、訪問を断られる度に、育児の悩み事や不安を誰にも話せずに家の中で孤立しているのではないかと危機感を抱いた。
地域の中でできることがあるはず-。その思いに賛同した助産師仲間が集まった。おしゃべり会では座談会をした後、助産師たちが赤ちゃんを預かって、母親たちが別の部屋でゆっくりとランチを楽しむ時間をとっている。子育ての息抜きをしたり、母親同士で親睦を深めたりしてもらう。
助産師の会のほかに、性教育活動にも力を入れている。学校などで性について考える「いのちのふれあい授業」を開いている。生殖や性交についてだけではなく、性の多様性やジェンダー平等など幅広く伝える「包括的性教育」に取り組んでいる。
授業では体外受精や同性カップルについても触れ、「男女関係なく、自分らしく過ごせる選択肢を選んでほしい」と語りかける。
生きづらさを感じず、その人がその人らしく過ごせる社会に近づくために、何を伝えるか模索しながら活動を続けている。「『あなたは大切な存在』と実感できるお手伝いがしたい。それが命を守る全てのことにつながっていくから」。
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