社説:自民派閥を捜索 「病巣」の徹底解明こそ
京都新聞 / 2023年12月20日 16時5分
自民党の裏金疑惑で、東京地検特捜部がきのう、安倍派(清和政策研究会)と二階派(志帥(しすい)会)の事務所を家宅捜索し、2ルートで強制捜査に乗り出した。
派閥の政治資金パーティーを巡り、組織的な裏金づくりが慣行になっていたとして、政治資金規正法違反の疑いが持たれている。自民党政治にはびこる病巣の徹底解明を求めたい。
自民党の各派閥のパーティー券は1枚2万円が相場で、所属議員ごとに販売枚数のノルマが課されるという。両派閥はノルマを上回る超過分を議員側にキックバック(還流)していたとみられる。
最大派閥の安倍派は、政治資金収支報告書に収入・支出とも記載せず、受領した議員側も収入として報告していなかった。不記載罪などの時効がかからない2018~22年の5年間で約5億円が裏金化されていた疑いがある。
一方、二階派では還流分について派閥、議員側ともに記載していたものの、派閥の全体収入を億単位で少なく記載していたようだ。
不記載などは会計責任者だけでなく、議員も詳細を把握していれば罪に問われる。焦点の議員の関与や故意性をはじめ、裏金がなぜ必要だったのか、何に使われたのか、詳細な解明が不可欠である。
捜査に委ねるだけでなく、党自ら事実解明すべきだ。辞任した前防衛副大臣が「派閥からしゃべるなと言われている」と暴露したように、かん口令を敷いて説明責任を放棄することは許されない。
「抜け道」となる企業・団体献金を防ぐ政治資金規正法改正や、派閥解体を含む改革こそが急務である。だが、法改正は党内に慎重論があり、党総裁の岸田文雄首相は「選択肢として否定しない」と危機感の欠如も甚だしい。
企業や団体がパーティー券を引き受ける背景には、政権政党と付き合いを深め、予算配分や事業受注といった見返りを求める思惑があるのではないか。組織ぐるみで裏金づくりに励み、業界との癒着によって政策がゆがめられているとの国民の疑念が渦巻いている。
政治資金の流れの透明化を目指した政治改革から30年近い。国民1人当たりコーヒー1杯分の税金で政党助成金を賄い、政治は襟を正すとの理念から実態は程遠い。
直近の各社世論調査で、内閣支持率は20%前後の「危険水域」へ急落し、疑惑の徹底解明を求める声は強い。与野党問わず、今度こそ政治資金の適正化に本腰を入れねばなるまい。
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