「就農2年目から利益を」元オムロン技術者が考える有機農業の未来 データ活用で「誰でも同じ結果」導く
京都新聞 / 2023年12月22日 8時0分
「就農2年目から利益が出るようにしたい。私は7年かかりましたが」。中村新さん(65)=大阪府島本町=が有機農業を志す仲間の“促成”に懸ける思いは、畑違いのサラリーマンから農業者に転身し経済的に苦労した経験からだ。
京都府亀岡市などが来年2月10日に開校する「亀岡オーガニック農業スクール」の校長に就く。化学合成した肥料と農薬を使わない有機農業を実践的に教える。新規就農者の育成が主な目的だ。
促成の鍵は、社長を務める農業ベンチャー「オーガニックnico(にこ)」(京都市西京区)で蓄積してきたデータの活用だ。肥料を「たっぷり」ではなく「1平方メートルに何グラム」。気温が「寒い時」ではなく「10度以下になったら不織布を掛けて」。「数値化することで誰がやっても同じような結果が出せる」と実践に裏打ちされた自負をのぞかせる。
滋賀県草津市出身。農学者の父親が庭でイチゴや野菜を育てるのを手伝い、農業は身近だった。だが進路は飯の種として有望だと聞いた光電子工学だった。大阪大基礎工学部を卒業し、制御機器大手オムロンで光を用いたセンサーの研究開発をした。
エンジニアの仕事は楽しかったが、「組織マネジメントの仕事が段々増えて、技術屋として面白くなくなった」。父親が普及に尽力した有機農法をビジネスとして広めたいと、42歳で仕事人生の後半を見定めた。
経営を知るためベンチャー企業で働き、農学校で1年間学んだ。2007年に京都府南丹市で就農し、10年に会社を立ち上げた。13年に西京区に移転し、有機野菜の栽培をしながら、社員の農学博士らと品質や生産性を高める技術開発や農業指導に取り組む。
社名の「nico」は、有機農産物の国内シェアを1%未満から25%へ高めるまで突き進むという意味で付けた。目標達成には、新たな仲間を増やすだけでなく、経済的な持続可能性が欠かせない。
「経済的に頓挫した人をたくさん見てきた。スクールでは勘や経験に頼らない栽培技術だけでなく、経営力もしっかり身に付けてもらう」。経営者の厳しい顔を見せる一方、有機農業の魅力を問われると「安心安全や環境負荷が下がるというのはもちろん、取れたものがおいしい」と頬を緩めた。
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