社説:選挙買収の逮捕 根深い自民の金権体質
京都新聞 / 2024年1月11日 16時0分
自民党のおごりと金権体質を象徴する点で裏金事件と通じよう。
昨年4月の東京都江東区長選を巡り、公選法違反(買収など)の疑いで東京地検特捜部が年末に逮捕した前法務副大臣で衆院議員の柿沢未途容疑者(52)=自民を離党、東京15区=がこれまでの否認から一転し、容疑を認める供述を始めたという。
区長選は、前回の衆院選京都3区で落選した木村弥生氏を、江東区が地盤の柿沢容疑者が支援。自民の推薦を得た元都議と保守分裂の争いとなった。木村氏は当選したが、問題発覚後に辞任した。
柿沢容疑者はともに逮捕された秘書らと共謀し、区長選の前後に自民系の区議や陣営スタッフに計約330万円を買収目的で渡したとされる。当初は同時に行われた区議選への「陣中見舞い」などと否認したが、受け取った区議らが買収目的を認めるなどしたため、追い込まれたとみられる。即刻、議員辞職すべきである。
柿沢容疑者は5期目で、みんなの党(当時)など野党を転々とした後に自民入り。昨年9月、岸田文雄内閣の再改造で法務副大臣に就いたが、直後に今回の問題が浮上し、1カ月余りで辞任した。その後も逮捕の2週間前まで自民に在籍していた。
岸田首相は副大臣辞任から逮捕に至るまで「任命責任を感じる」「大変遺憾」といった紋切り型の言葉を繰り返すばかりだった。
自民では2019年の参院選広島選挙区で、100人もの地方議員らに現金を配った買収事件で、元法相の河井克行元衆院議員らの実刑が確定している。
党としての教訓が何ら生かされていないのには、あきれ果てる。公正な選挙を妨げる有権者への背信行為と言わざるを得ない。趣旨や使途をあいまいにしたまま、議員間でカネをやりとりする実態にこそメスを入れねばならない。
特捜部は自民の派閥裏金事件でも、政治資金規正法違反の疑いで安倍派衆院議員を逮捕した。
いずれも背景には、12年の政権復帰から続く自民の「1強」状態で、権力の維持拡大に手段を選ばない政治倫理の欠如、金権体質へのまひがあるのではないか。首相は党内改革や法整備の強化を本気で主導すべきだ。
柿沢容疑者は木村氏と共謀し、区長選中に有料インターネット広告をサイト上に掲載した疑いもある。衆院議員、総務大臣政務官として京都で政治活動をしていた木村氏にも説明責任を求めたい。
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