社説:新NISA リスク踏まえて冷静に
京都新聞 / 2024年1月12日 16時0分
株式相場が急騰している。きのうの東京市場の日経平均株価は終値で3万5000円台に乗せ、バブル期の1990年2月以来の高値水準となった。
株高の一因が、今月から始まった新たな少額投資非課税制度(新NISA)とみられている。
株式や投資信託で得たもうけが一定条件で非課税となる制度で、優遇拡大による個人投資の流入が押し上げているようだ。
ただ、混迷する国際情勢や震災の影響、国内外の金融政策の変動などで、市場の先行きは不透明感が強い。
光の当たる利殖面だけでなく、表裏一体に損失の恐れもある投資のリスクを十分に認識し、長期的な視野で冷静に判断できる環境整備が欠かせない。
新NISAは、岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」の一環で、投資による個人の資産形成を促す施策だ。「貯蓄から投資へ」をスローガンに、2千兆円に上る家計の金融資産を市場に引き入れ、株価浮揚や経済成長につなげる狙いがある。
時限措置として2014年に始まったNISAを拡充し、年最大120万円だった投資の上限を360万円に引き上げた。非課税の期間も最長20年から無期限とし、政府は5年間で制度を活用する総口座数を3400万へ倍増させたいという。
個人資産を巡っては、日銀の大規模金融緩和を背景に預貯金の超低金利が続く一方、円安で好調な輸出企業の業績から株式投資への注目が高まる。
新NISAを呼び水にと、企業側も個人が買いやすいよう株式分割で最低購入額を下げる動きが相次ぐ。インターネット証券会社なども手数料無料やポイント付与を打ち出し、新規客の取り込みに躍起だ。
一方で、投資に回す蓄えのない家庭は多く、一定の資産を持って恩恵を得る人と格差が広がる面は否めない。岸田氏が就任当初に掲げた「所得倍増」や、金融所得課税強化などの格差是正は棚上げされ、運用任せの「資産所得倍増」にすげ替えられた形だ。その果実をどれだけの人が実感できるだろうか。
新NISAは、生涯を通じた投資上限が1800万円に上り、相場次第で老後資金も危うくしかねない。投資のリスクの分散化に留意し、利用者への丁寧な説明や迅速、正確な情報開示の徹底が求められよう。
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