社説:阪神大震災29年 急務の耐震化、密集対策
京都新聞 / 2024年1月17日 16時5分
6400人以上が亡くなった阪神淡路大震災の発生から、きょうで29年となる。
犠牲者の大半が、建物倒壊による圧死だった。耐震性の低い古い木造住宅の被害が大きく、立て込んでいた神戸市長田区などでは火災で、7千棟が焼けた。密集市街地の脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りとなったことを改めて思い起こしたい。
年明けの石川県の能登半島地震でも倒壊家屋が多くの犠牲者を生んでいる。輪島市や珠洲市の耐震化率が、全国平均より低かった影響は否めまい。古い店が集まる観光地「輪島朝市」周辺では、大規模火災も発生した。
密集市街地は狭い路地が多く、消防車が入りにくい。倒壊による大量のがれきで消火栓が十分使えず、消火活動が難しい。建物の耐震化を進め、火災延焼を食い止める対策を強化せねばならない。
国土交通省が公表する「地震時等に著しく危険な密集市街地」は12都府県で1875ヘクタール。京都府は京都市の6地区220ヘクタール、滋賀県は大津市の2地区10ヘクタールだ。
京都市では、袋路での避難経路整備などの制度を設け、町並みを維持しながらの対策を進める。大津市では消火器や消火栓の設置などにとどまるという。
石川県が国の「密集市街地」に含まれていなかったように、制度自体が十分ではない面がある。京滋でも他地域を含め再点検し、一層の工夫で防災力を高めたい。
能登半島地震で新たな課題として浮かび上がったのが、半島での防災対策である。
大半で交通アクセスが限られ、過疎が進む。能登半島でも地震で道路が寸断されたため、被災状況の把握や救援、物資搬入が遅れている。いまだに孤立状態や断水が続く地域がある。
同様の地理条件として、京都の丹後など23地域が半島振興法に位置づけられている。石川県では26年前の地震被害想定が更新されていなかった。
折しも府は、花折断層帯を震源とする地震の被害想定を15年ぶりに見直しているが、半島防災も課題としたい。孤立が長引く可能性を前提に備蓄や支援体制、帰省や海水浴客でにぎわう時期への備えなども含め練り直すべきだろう。
これまで南海トラフ巨大地震など、太平洋沿岸地域の防災対策が注目されていたが、日本海側の津波は発生からの到達時間が極めて短い。早期避難につなげるハード・ソフト両面の対策、沿岸住民の防災意識の向上が欠かせない。
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