社説:能登地震と原発 日本海側の施設点検を
京都新聞 / 2024年1月19日 16時5分
改めて各地の原発の地震リスクを精査する必要がある。
最大震度7を観測した能登半島地震で、震源に近い北陸電力志賀原発(石川県志賀町)には強い揺れに加えて高さ3メートルの津波が襲来した。変圧器が一部破損して大量の油漏れが発生、外部電源の一部も使えなくなり、核燃料プールからは水があふれ出た。
揺れが設計時の想定を超えていたことも原子力規制委員会に報告された。放射性物質の漏出はなく、使用可能な外部電源によって安全確保に問題はないとしている。
原子炉が2基ある志賀原発は2011年の東日本大震災以降、長期停止している。北陸電は原発敷地内の断層について「活断層ではない」とする独自の調査結果を原子力規制委員会に示し、2号機の再稼働に向け準備を進めていた。
しかし、今回の地震では、海底活断層も含めた複数の断層が150キロ以上にわたり連動して動いた可能性があるとみられている。
そもそも陸域に比べ海底活断層については、政府の地震調査委も詳細な調査や評価をしてこなかった経緯がある。規制委は「(海底断層について)新知見として審査に取り入れなければならない」と指摘し、志賀原発は評価の見直しが不可欠になった。
山中伸介委員長は「調査や評価には年単位の時間がかかる」とする。日本海側に並ぶすべての原発について、リスク評価を再点検すべきではないか。
東京電力福島第1原発事故を踏まえた原発の新規制基準は、原発内に非常用電源などを整備するよう求めているが、志賀原発では原発内部の変圧器が破損した。「想定外」では済まされない。規制委は今回の地震で得た新知見を他の原発にも適用することを示唆している。厳格に運用してほしい。
北陸電は地震直後、変圧器の破損や冷却プールの水があふれたことを明らかにせず、その後の発表でも訂正を重ねた。
同社は1999年に臨界事故を起こし、その後8年間も伏せていた。情報隠ぺい体質が今も続いていると疑わざるを得ない。
原発事故時の住民避難にも厳しい現実が突きつけられている。
避難計画では、15万人が車で県南部へ避難することになっているが、現実には道路が寸断され、各地の集落は孤立した。多数の家屋倒壊で屋内退避も困難だった。
避難は本当に可能なのか。日本海側の原発に隣接する京都や滋賀にとっても重要な課題である。
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