社説:京都市長選告示 政策論争で未来切り開いて
京都新聞 / 2024年1月21日 16時0分
人口減をはじめ山積する課題から、いかに京都市政の新たな展望を切り開くか。建設的な論戦を求めたい。
任期満了に伴う京都市長選がきょう告示される。4期務めた門川大作市長の引退表明を受け、16年ぶりに新たなかじ取り役を市民が選ぶ機会となる。
立候補を準備しているのは元内閣官房副長官の松井孝治氏、弁護士の福山和人氏、元京都府議の二之湯真士氏、元京都市議の村山祥栄氏の4人。国政政党レベルでは松井氏と福山氏の支援に分かれる構図となる。
門川市政は赤字財政を改革して脱却にめどをつけたとする半面、福祉関係の補助金削減や市民の負担増を強いた。観光では訪日客増で市バスや地下鉄経営が好転する一方、暮らしに影響するオーバーツーリズム(観光公害)の対応は後手に回った。
光と影の両面を踏まえ、各候補は公約で何を継承し、転換するのかを掲げ、市政の方向性を有権者に分かりやすく訴える政策の提示が欠かせない。
最大の論点は人口減への向き合い方だろう。不動産価格の高騰で、住まいを求める若者や子育て世代の市外流出が続く。対策として、市は一部地域で都市計画を変更して住宅整備を促そうとしている。
市政の柱としてきた景観政策の見直しでもあり、拙速に進めてはなるまい。全市的な観点で保全と開発のバランスを論じるべきではないか。
こうした社会減に対し、長期的には自然減が進む。国は2050年に市の人口が124万人になるとの推計を示す。税収減が見込まれる中、どう優先順位をつけて配分するか。各候補は明確に打ち出してほしい。
門川市政で導入した宿泊税や全国初の課税を計画する別荘・空き家税の在り方を含めて、財源の確保と活用を一体で示す必要があろう。
人口減を緩やかにするためにも、少子化対策と子育て支援が重要な争点となる。医療や学校給食を巡っては無償化や負担軽減の主張も出ている。必要な人材の確保をはじめ、質の維持向上を裏付ける施策が不可欠だ。
京都市を経由する北陸新幹線延伸への対応も問われる。巨額の工事費負担に加え、森林環境や地下水への懸念が大きい。
新型コロナウイルス禍で緊迫した危機管理、能登半島地震を受けた防災も課題となる。医療や福祉、建設、運輸など多くの業界で人材不足が叫ばれる中、緊急時にどう備えるか。市民の関心は高まっている。
きょうは滋賀の県都・大津市で市長選の投票日を迎える。京都からの人口流入によるマンション増加とまちづくり、観光客の周遊など両市が連携を深めるべき分野は広い。
京都、滋賀の中心である市の未来を考え、重大な針路を決める1票を投じたい。
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