社説:被災地の教育 学びの保障と心のケア必要
京都新聞 / 2024年1月22日 16時0分
被災した子どもたちの学びを全面的に支援するとともに、過酷な体験への心のケアにも目配りしてほしい。
能登半島地震で甚大な被害が出た石川県の輪島市などで、家族から離れて中学生を集団避難させる取り組みが始まっている。
被災地の学校は、校舎の損壊や断水などの影響に加え、地域住民の避難所にもなっている。
授業再開やインフラ復旧が見通しにくい中、学習の遅れや間近に迫る受験の準備に不安を抱く生徒らが、落ち着いて学べる環境を確保する現実的な選択肢といえよう。
輪島市では、全3市立中の生徒約400人のうち希望した約260人が、約100キロ離れた県南部の白山市の宿泊研修施設に避難した。3校の教員25人が付き添い、施設内や地元校の空き教室で授業を行う。
珠洲市と能登町も同様に、計約140人の中学生が金沢市の施設へ集団避難を始めた。
親しい友だちや教員らと一緒に勉学を続けられる環境は望ましい。半面、爪痕深い被災地の保護者と離れて過ごす心細さや、残る友人との隔たりを感じる生徒もいるだろう。
教員やスクールカウンセラーらが連携し、子どもたちが被災で負った心の傷と、抱え込んだ不安や悩みを受け止め、ケアしてもらいたい。
文部科学省が東日本大震災の翌年行った調査で、物音に敏感になったり、急におびえたりする心的外傷後ストレス障害(PTSD)が疑われる症状が、高校生以下の14.1%にみられたという。腰を据えて取り組むべき課題だ。
輪島市では、集団避難の期間を最大2カ月程度と見込むが、さらに長期にずれ込む可能性もある。家族らと行き来できる機会を設け、帰宅を希望する場合などにも柔軟な対応が求められよう。
一方、さまざまな事情で地元の被災地に残ると決めた生徒たちの学習支援も、同時並行させる必要がある。
文科省は、被災地向けに学習用デジタル端末約1500台を無償提供するとした。オンラインで結んだ遠隔授業への参加や教員の巡回指導、避難所での学習場所の確保など、手を尽くしてほしい。
年齢的に保護者から離れるのが難しい小学生では集団避難は見送られ、被災地で学校再開を急ぐ。高校生には、金沢市内のホテルに避難所が設けられた。それぞれの状況に応じた学びの保障が必要だろう。
とりわけ受験生の出願と試験日程への配慮や、入学金や奨学金などの支援も求めたい。
傷ついた子どもたちに寄り添う教員らも被災している。全国から応援の教員やカウンセラーらを送り、手厚くバックアップしたい。
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