能登半島地震の被災地、長引く避難生活「心身疲労に対応を」避難所運営の職員が訴え
京都新聞 / 2024年2月1日 15時0分
石川県能登半島地震の被災地支援に派遣され、避難所運営に携わった京都府大山崎町職員2人が帰任した。ライフラインが打撃を受けた七尾市での5日間の活動を振り返り、長引く避難生活の中で衛生環境を維持し、感染症対策を徹底する難しさ、被災者らの心身の疲労に対応する重要性を語った。
総務課危機管理係の小林昭博さん(38)と同課総務係の石橋晶さん(38)。府や府内の自治体の職員ら計約30人と共に七尾市に派遣され、1月17~21日に小学校に開設された避難所で活動した。1日2交代制で、2人は夜間の午後8時~翌日午前8時を担当。宿舎のある金沢市から往復3~4時間かけて通った。
同避難所では水道が止まって水洗トイレは使えず、バケツなどにためた水で排せつ物を流したりビニール製の簡易トイレで対応したりした。トイレットペーパーは流さず汚物入れに捨てており、トイレには臭いが漂った。避難者は21日になって初めて洗濯ができた。石橋さんは「ライフラインのどれか一つでも止まると、こんなにも不自由になるのかと実感した」と振り返る。
被災地では新型コロナウイルスなど感染症患者が増え、対策にも力を入れた。人が触れそうなドアノブや手すり、スリッパは全て消毒したという。
被災地の現場に立って、必要性に気付くこともあった。例えば車いす。足が不自由な高齢女性をトイレに案内する際は、代わりにキャスター付きの椅子に乗ってもらって押した。2人が一緒に活動した自治体の職員計7人は全員男性で、石橋さんは「トイレ入り口までしか案内できなかった。女性がいたら、より丁寧に対応できたのでは」と振り返る。
避難所には仕切りがなく、「プライバシー確保が課題だった」と語るのは小林さん。言い合いになる避難者も見かけた。夜中に世間話をしにくる人もいて、1時間ほど話し相手になることもあった。小林さんは「ストレスがたまったりさみしさを感じたりしていたのでは」とおもんぱかる。
一方、2016年熊本地震や18年西日本豪雨などでは、被災自治体の行政職員が精神面の不調に陥るケースが問題になった。七尾市では避難所から出勤する職員もいた。2人は「期間が(5日間と)決まっている自分たちでさえきつかった。しんどくなる理由が分かる」と声をそろえる。
活動した避難所では食料や飲用水、暖房は十分あると感じたという。電気は使え、スマートフォンを充電し、テレビを見ることもできた。それでも、「さまざまな課題点が見つかった」と小林さん。大山崎町の災害対策への決意を新たにした。
七尾市の避難所運営支援には、京都府向日市や長岡京市の職員も当たった。
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