社説:能登地震1カ月 目詰まり改め、息長い支援を
京都新聞 / 2024年2月1日 16時0分
あまりにも厳しい年明けだったろう。能登半島地震の発生から、きょうで1カ月となった。
家族団らんの元日夕を襲った最大震度7の激しい揺れは、石川県を中心に甚大な被害をもたらした。死者は238人で、うち15人は「災害関連死」。今も19人が安否不明のままだ。
各地の土砂崩れで多発した孤立集落は、約3週間がかりでほぼ解消されたが、県内で約4万6千棟もの住宅が被害を受けた。犠牲者の大半が倒壊に巻き込まれた圧死などだった。
広い範囲で続く断水をはじめ、生活インフラの爪痕も深い。厳冬の降雪期に、いまも約1万4600人が避難生活を余儀なくされている。
道路寸断、支援届かず
平成以降も阪神、東日本両大震災に見舞われた教訓から、発生直後から国や自治体の連携で大がかりな救援派遣が取り組まれた。
ただ、太平洋側の南海トラフ巨大地震対策などに比べ、日本海側は大災害の経験や備えの不足が否めない。半島先端部に当たる現地の限られた交通アクセスや、市町職員らの被害も影を落とす。
支援が被災者に行き届かない「想定外」の困難さが浮き彫りになった。
援助の目詰まりを現状に即して柔軟に見直し、被災者の暮らしの支援と再建、着実な地域復興に向けた息の長い支援につなげていかねばならない。
現時点で喫緊の課題は、被災者たちの居住環境の改善であろう。
県は、家屋の損壊などで最寄りの避難所に身を寄せる住民の集中や感染症リスクを減らすべく、より生活環境の整ったホテル、旅館など宿泊施設への「2次避難」を促している。
県内外で1100施設、3万人分の受け入れ先を確保した。だが、移ったのは避難所全体の33%、約4800人にとどまっている。
環境変化への配慮も
愛着のある地域から遠く離れ、転々と生活環境が変わる不安に、二の足を踏む人が少なくない。仕事や介護といった理由もあるようだ。地元に戻って来られる時期や受け皿の見通しを示すことが求められよう。
県内の賃貸住宅を借り上げる「みなし仮設」や、公営住宅の空き部屋の利用に加え、まとまった数の応急仮設住宅の建設が急がれる。
県は、3月末までに現地で約3千戸を着工する計画で、順次入居を始める。ただ、山間部が多いために候補となる空き地は限られ、現状では浸水想定区域を建設地に使わざるを得ないなど、確保の見通しは不透明だ。
復旧・復興の進ちょく状況に応じ、避難者のニーズに沿って既設、仮設の受け皿を組み合わせるべきだろう。
ただ、過去の大災害では、分散して入居した仮設住宅で近所付き合いが減り、環境の変化になじめない高齢者らの心身の不調や孤独死が問題となった。「ご近所さん」と一緒に入居してもらうなど、地域コミュニティーの維持への配慮を講じたい。
他方、持病の不安やペットがいるなどの理由で、被災住宅にとどまる在宅避難者も少なくない。余震で崩れる危険に加え、行政からの支援の情報や物資が届きにくい状況にある。
自治体側から避難所や仮設入居、在宅の被災者を訪問し、状況把握に努めるとともに、福祉支援が必要な人へのケア体制を地域ぐるみで整えていく必要がある。
過疎と高齢化が進む地方で、自治体職員も被災してマンパワーが限られる中、被災者の支援と地域復興には広域連携が重要だ。
阪神大震災を教訓に全国各地の消防に「緊急消防援助隊」が作られ、能登地震でも発生当日、消防庁の指示を受けて京都、滋賀を含む11府県から出動した。計1900人が派遣され、被災者の捜索・救助などに当たった。
幅広い連携づくりを
ただ、各地の道路被害で大型車両が通れず、要救助者の生存率が急落する発生後72時間以内に珠洲、輪島両市の被害集中地域で活動できたのは約半数だったという。機動的な装備や運用の見直しが必要だろう。
また、避難所運営や支援調整なども全国の自治体からの応援職員が支えており、京都府・市や滋賀県などの延べ1100人以上が活動している。
今後、住民への罹災(りさい)証明書の発行を加速するには応援の増強が必要な上、インフラ復旧には中長期の応援が求められる。全国的に技術職員は限られるが、被災地で実務の経験と知識を得て、地元に還元する意味でも各府県で分担して派遣してはどうか。
政府は「激甚災害」指定による補助率引き上げや、約1500億円規模の支援で後押しするが、人的応援や現地負担の軽減にも力を尽くしてほしい。
災害時対応のノウハウを持つ宅配業者やコンビニ、移動販売など、民間の専門事業者との連携や、多数の登録者が集まっている市民ボランティアらとの協力も最大化したい。
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