社説:国会の裏金答弁 目に余る首相の消極さ
京都新聞 / 2024年2月7日 16時5分
今国会の焦点である政治改革を巡り、岸田文雄首相の腰の引けた答弁が目に余る。
岸田氏は派閥の裏金事件への批判の高まりに、政治資金規正法改正を「今国会で実現する」とはしたものの、罰則強化や透明性の確保といった具体的な論点には触れない。政治資金収支報告書に記載されていない裏金の課税にも消極的な言葉を繰り返すばかりである。
自民党は資金収支報告書で不記載があった議員名と訂正額の一覧を野党側に示したが、安倍、二階両派のみ対象で、過去3年分にとどまる不十分なものだ。
裏金はいつから、どのように作られ、何に使ってきたのか。これらを明らかにすることが、政治改革の具体論の入り口になるはずだが、「火の玉に」「先頭に立つ」としてきた岸田氏の指導力は、まったく感じられない。
法改正の論点にあがる連座制による厳罰化や企業・団体献金の禁止、政策活動費を含む透明化向上などについても「党の意見をまとめた上で各党と協議する」とするだけで、本気度が疑われる。
二階俊博元幹事長が政策活動費として受け取ったとされる約50億円について、野党から使途公開を求められると「確認するまでもなく、適切に使用されている」と調査すら拒んだ。危機感の欠如が甚だしい。
野党は組織ぐるみの裏金づくりの解明へ、安倍派幹部らが出席する国会の政治倫理審査会の開催を求めているが、岸田氏は対応を明言しなかった。
裏金を受けた自民党議員は秘書への責任転嫁や「事務的なミス」との説明を繰り返している。
党幹部が安倍派や二階派などの議員に事情聴取を行っているが、身内の調査が真相に迫れるかは心もとない。
党として派閥資金パーティー収入に関するアンケートを所属の全国会議員を対象に始めたが、記載漏れの有無と年次の金額を自主申告させるのみで、これも批判をかわす茶番にしか見えない。
共同通信の世論調査(3、4日)では、内閣支持率は昨年11月から4回続けて20%台と最低水準にある。
裏金を受け取った議員が「説明する必要がある」との回答は8割超となった。会計責任者だけでなく関係議員が連帯責任を負う連座制強化も8割近くが求めている。
口先だけでは信頼回復はおぼつかない。岸田首相はそう肝に銘じて問題に向き合うべきだ。
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