滋賀県教育行政トップに聞く 教員の働き方改革「悩み話せる風通しのよさ大切」
京都新聞 / 2023年11月22日 11時25分
教員の働き方について、京滋の教育行政のトップに問う3回シリーズの最終回は、滋賀県教育委員会の福永忠克教育長に聞いた。
―県教委の取り組みは。
「2018年に『学校における働き方改革取組計画』を作り、これまで2回改定した。学校業務の見直し・効率化、部活動での教員の負担軽減、教員以外の多様な人材確保、家庭や地域の力の活用、笑顔で児童生徒と向き合える職場環境づくり、の五つの柱で取り組みを進めている」
「先生が疲弊していると子どもも相談しづらい。時間と心の余裕を持てて、先生も悩みがある時には他の先生に話せるような風通しのよい学校現場が大切だ」
―過労死ラインとされる月80時間超の超過勤務の教員をゼロとし、月45時間以内に抑えるとする目標を前計画から掲げるが未達だ。
「一番しなければならないのは月80時間超の教員をゼロにすること。健康や命に関わるからだ。次に全体で月45時間以内にしたい」
―県立高では昨年度、超過勤務の多い教員の割合が増加した。理由は。
「出退勤管理にICカードを導入し、勤務時間が正確に把握できるようになったことが大きい。小中学校でもICカードの全導入が理想。市町によってシステムが違うが、できれば統合に向けて進めたい。働き方のアンケートも毎年行い、状況の把握に努める」
―職種別では教頭・副校長が特に忙しい。月80時間超の超過勤務が半数近く、月45時間超は9割を超す。
「勤務時間があまりに長いと、中堅が校長や教頭になろうと思わなくなり、学校現場の体制が構築できなくなる。教頭の業務を見直すため、小中高の3校で『学校経営骨太モデル事業』を始めた」
「主幹教諭らベテランの授業を減らし、その分、教頭の仕事の一部を担ってもらう。教頭の業務を把握することで養成につながり、教頭も若手の相談や学校運営など本来業務に打ち込める。文部科学省の概算要求にある『副校長・教頭マネジメント支援員』とも組み合わせて拡充を検討する」
―各種報告書の作成など事務量の多さを負担に感じる教員が目立つ。
「国の通知を含めさまざまな文書が、県教委各課から市町教委や県立学校に送られている。大半が紙ではなくメールになったが、逆に膨大な量を送付してしまっている。今月から県教委各課の担当者でワーキンググループを立ち上げた。文書総量の削減や注意すべき文書の明確化など、改善点はどんどん実行に移したい」
―中教審の緊急提言では、授業時数の多さに対する指摘もあった。
「不測の事態があっても困らないよう、授業時数を多めに確保する傾向はあったが、その意識が新型コロナウイルス禍で強化された。授業時数が多すぎる学校もあり、改善に向けて指示しているが、保護者の理解も必要なので丁寧に進めたい。行事も子どもが主体。準備やリハーサルにそこまで時間をかける必要はないのではないか」
―教員のなり手不足をどう認識しているか。24年度の高校教員の志願倍率は3.9倍と、前年度の5.9倍から大きく下がった。
「採用予定者数が増えたことが大きい。一方で年齢が下がるほど少子化が進んでいる。まず小学校で児童数が減り、クラスや担任も減る。採用者数もピークアウトしつつあり、中高の順で徐々に減るとみられる」
「公立学校の教員は23~24年度に61歳定年、以降2年ごとに1歳ずつ引き上げられ『65歳定年』となる。どれほどの先生が残るのかも踏まえて採用者数を考えていく必要がある」
―教員確保の具体策は。
「23年に行った24年度の採用試験から、受験年齢の上限を10歳引き上げて60歳未満にした。50代でも熱意があり、採用した例もある。現職教員を対象にした秋選考も初めて実施した。12人を採用でき、手応えを感じている」
―働き方改革への意気込みを。
「今のような多忙な状況は好ましくなく、改善しなければならない。そのためには、待遇も職場としても安定する正規の先生を増やすことが望ましい。県内の公立小中教員の正規割合は91.7%(4月現在)と、全国平均の92.2%を下回る。できる限り引き上げたい」
「国には教員定数の改善や加配拡大などを要望しており、教員免許を持つ人へのアプローチも引き続き行う。現場の先生が専門家に頼れることも大切だ。不登校やいじめの件数が増える中、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの配置時間を増やすことで子どもたちも相談しやすくなる。部活動指導員や教員業務支援員の拡充にも取り組みたい」
◇
ふくなが・ただかつ 1958年、旧甲賀町(現甲賀市)生まれ。京都大経済学部卒。1982年に滋賀県に採用され、商工観光労働部長や総合政策部長などを経て、2019年から現職。ドライブで「道の駅」を巡るのが趣味。
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