肺がんでステージ4宣告… 79歳で挑戦、書画を学んだ女性が今春、芸術大学を卒業へ 「がんになっても人生は楽しめる」
京都新聞 / 2024年2月15日 18時0分
肺がんのステージ4を宣告された京都市左京区の79歳の女性が今春、京都芸術大(同区)を卒業する。余命を意識し、未経験の書画を学ぼうと大学に通って2年。無鉄砲な挑戦だったが、病を忘れるほど没頭し、「がんになっても人生は楽しめる。次は大学院へ」と意欲は尽きない。
「肺に無数のがんがあり、延命治療しかできない」。長谷雄芳子さんは、闘病を始めて7年を迎えた77歳の冬、主治医からそう告げられた。父をがんで亡くしており「私にも来たか」と覚悟を決めた。同時に「しんどいだけの余生は嫌だな」との思いが込み上げた。
そんな時、同大学が通信教育の書画コースを開設すると知った。「字が苦手で、最後に自分の名前くらいきれいに書きたい」とカルチャー教室に通う感覚で入学を申し込んだ。
現実は違った。短大卒業資格で3年生に編入すると、がくぜんとした。オンライン授業で学ぶのは本格的な書道と水墨画で、ペン字はない。実技以外に、中国伝来の漢字文化や書画理論の座学もめじろ押しだ。
「思ってたのと違うわ。でも、人生の最後で投げ出したくはない」。押し寄せる課題制作やリポート執筆を必死でこなした。初心者だったが少しずつ上達し「面白い。この年齢で新しい世界を知った」とのめり込んだ。気付けば単位を一つも落とすことなく、今春の卒業資格を得た。
抗がん剤を毎日服用し、肺に病巣がある影響で長い距離を歩くと呼吸が乱れる。ただ、書画に親しむ時間は闘病のつらさを忘れさせてくれる。4月に同級生ら15人と卒業制作展を開く予定で、大学院で新たな分野を学びたい、と次の目標を思い描く。
「がんには逆らえない。病を受け入れ、今を生きる幸せを感じていたい」。残された時間を思い、長谷雄さんはたくましく笑った。
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