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社説:危険運転罪 悪質さの線引き明確に

京都新聞 / 2024年2月28日 16時0分

 悪質な自動車運転による死傷事故の歯止めにつなげたい。

 法務省は、危険運転致死傷罪の要件見直しに向け、有識者による検討会を設けて議論を始めた。

 法定速度を大幅に超過する高速走行でも、条文が抽象的なために適用されないケースがあり、問題になってきた。

 検討会には学者や法曹関係者に加え、被害者の遺族も加わり、政府は自動車運転処罰法の改正も視野に入れるとしている。

 理不尽な事故の犠牲を繰り返さないため、単に「過失」と認められない悪質行為への適用をどう広げるか、より明確な基準が求められよう。

 危険運転致死傷罪は、女児2人が死亡した飲酒運転事故の遺族らの署名活動を契機に、2001年に創設された。

 悪質運転による死傷事故の場合、「故意犯」として法定刑の上限を懲役20年とし、過失運転致死傷罪の懲役7年より重くした。

 ただ、要件があいまいで、認定のハードルが高いと批判が強い。

 高速運転に関しては「進行の制御が困難な高速度」を要件としている。車両の性能や道路の状況を含め、制御困難の立証が求められ、直線道路を車線に沿って走っていれば該当しにくいとされる。

 津市で18年、法定速度60キロの道路を時速146キロで走行した車の死亡事故で、裁判所は危険運転罪の成立を否定し、過失罪にとどめた。だが、制限速度の2倍を超える加速が「単なるうっかりなのか」との遺族の疑義はもっともだ。

 また、信号無視による事故の要件は「殊更に無視」、飲酒運転では「正常な運転が困難な状態」を認定する難しさが壁になっているという。線引きの明確化や数値基準を具体的に議論すべきだろう。

 悪質運転の規制を巡っては、12年に亀岡市の児童ら10人が死傷した事故で、無免許運転の少年らに危険運転致死傷罪が適用されず、大きな問いを投げかけた。遺族らの求めが自動車運転処罰法の制定につながり、無免許の事故に最高で懲役15年が科されるようになった。

 その後も、あおり運転など危険運転による重大事故が起きるたび規制強化と厳罰化が進んできた。

 検討会では、スマートフォンの操作など「ながら運転」を重く処罰するかも論点という。

 厳刑を科せば一挙に解決するわけではない。人命を奪いうるドライバーの責任の重さと安全教育・マナーを社会全体で問い直し、広く共有していく必要があろう。

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