社説:特殊詐欺が最多 中枢メンバーの摘発を
京都新聞 / 2024年2月29日 16時0分
交流サイト(SNS)を通じてつながった組織が、広域的に詐欺を重ねる―。社会全体で歯止めをかけねばならない犯罪だ。
2023年の特殊詐欺の認知件数が1万9033件(暫定値)に上り、直近10年で最多となった。京都府は189件、滋賀県は269件だった。被害総額は441億2千万円で、日々1億2千万円がだまし取られている計算になる。
警察庁によると、摘発者の約7割を占めたのが、被害者から現金などを受け取る「受け子」、口座から金を引き出す「出し子」、それらの見張り役だった。一方、首謀者など中枢メンバーの摘発はわずか2.5%にとどまる。
詐欺グループは匿名性の高いSNSで実行役を集めるため、中枢メンバーを特定しにくい。地方の高齢者をだまし、首都圏のATMで現金を下ろすのが典型で、被害は広範囲に及ぶ。
警察は各都道府県警が連携して捜査に当たる「特殊詐欺連合捜査班」を4月に発足する。首謀者の摘発に注力し、早期解決につなげてほしい。
「捨て駒」にされやすい受け子は若年層が目立つ。SNSの「闇バイト」に応募して加担するケースが多く、軽い気持ちで手を出しているようだ。家庭や学校で危険性を十分伝えたい。若者の孤立や貧困への対策も要る。
詐欺グループが日本の捜査権が及ばない国外へと拠点を移しているのも、被害が減らない要因である。昨年、海外拠点の犯行摘発は69人で、統計をとってから最多に達した。
「ルフィ」などと名乗り、東京都狛江市や京都市での強盗を指示したとされる特殊詐欺グループは、フィリピンを拠点としていた。死者も出ており、現金を欲しいがために凶悪化が進んでいる。
東南アジアを中心に各国の捜査機関の協力が一層求められよう。
昨年末に開かれた先進7カ国(G7)内務・安全担当相の会合では、特殊詐欺に対し、各国が連携して抑止に努めることで合意した。法的な枠組み作りも急ぐべきではないか。
特殊詐欺をはじめ、路上強盗やひったくりなどの急増を背景に、刑法犯の認知件数自体が増加している。警察庁アンケートによれば、ここ10年間で治安が悪くなったと感じる人は約7割に上る。
安心で安全な暮らしの根幹となる治安の維持には、警察にとどまらず行政や企業、地域などのネットワークの強化が欠かせまい。
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