社説:先島諸島の避難 現実離れの計画よりも
京都新聞 / 2024年2月29日 16時5分
政府が台湾での「有事」を念頭に、沖縄県の先島諸島から九州各県と山口県に住民約12万人を避難させる計画を作り始めた。
石垣島を中心とした八重山地域の住民は九州北部の各県と山口県へ、宮古島と多良間島の住民は南九州の3県へ避難する。
これほど多くの住民をどうやって安全に運ぶのか、受け入れ先はあるのか、高齢者や病気、障害を持つ人にも円滑に避難してもらう手立てはあるのか。疑問は尽きない。実効性のある計画になるとはとても思えない。
政府は2016年以降、与那国、宮古、石垣の各島に陸上自衛隊の駐屯地を開設した。さらに22年の安全保障戦略の改訂で反撃能力の保有を決め、沖縄本島の駐屯地には敵基地攻撃に使用できる長射程ミサイルの配備を検討。訓練場の新設も計画している。
他国を攻撃できるミサイルを保有すれば、相手の攻撃目標になる危険性が一層高まる。
地元の石垣島や宮古島の首長らは、政府による軍事拠点化を事実上受け入れる一方で、島民の避難体制や避難施設の整備を要望してきた経緯がある。
政府は九州と山口の各県にホテルや旅館、公営住宅などの受け入れ施設、備蓄している食料などの物資、利用できる医療機関について調査、報告を求めている。3月にも集約し、1年後に「初期的計画」としてまとめる。
避難指示は、政府が「武力攻撃予測事態」を認定すると発出される。だが、すべての人が財産や仕事を置いて島を離れられるだろうか。九州や山口にも、標的となる自衛隊や米軍の基地はある。
不可解なのは、沖縄本島が、避難計画の対象外となったことだ。
本島には主要な米軍基地や自衛隊基地が集中している。「有事」の際に狙われるのは本島の基地ではないか。
計画案では、先島諸島の観光客を1万人と想定しているが、これも実態とはかけ離れた少なさだ。
不測の事態に備える必要性は理解できる。
しかし、先島諸島を含む南西諸島を軍事拠点化して沖縄を「盾」にするような防衛政策は、辺野古の米軍基地建設を通して深まる沖縄と政府の溝を、さらに広げるだけだろう。
日本、中国、韓国の首脳による会談(サミット)が、近く韓国で開催される。
対話を積み重ね、武力衝突を回避するための信頼関係を構築する外交こそ問われている。
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