社説:迷走の政倫審 覚悟見えぬ首相の弁明
京都新聞 / 2024年3月1日 16時5分
未曽有の裏金事件を反省し、国民の政治不信を払拭しようという本気が一向に見えない。
史上初の現職首相の出席という異例の展開で、ようやく開かれた衆院政治倫理審査会である。
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で立件され、解散を決めた3派閥のうち、初日は岸田派会長だった岸田文雄首相と、二階派の武田良太事務総長が出席した。
自民側が渋ってきたテレビ中継を含む全面公開の形で弁明に立ったが、新たな事実や追加調査に踏み込んだ発言はなく、国民の疑念に応えるには程遠かった。
そもそも政倫審に至る自民の迷走ぶりは目に余った。
検察の強制捜査を受け、安倍派議員3人と3派閥の会計責任者ら計8人にも立件が及んだ事件だ。
野党側は、派閥からの還流を政治資金収支報告書に記載していなかった衆院議員51人全員の政倫審出席を求めた。自民は安倍派幹部が出席に応じ、先月28日からの開催で大筋合意していた。
だが、全面公開を主張する野党に対し、自民は難色を示し、出席拒否が相次いだとして開催の見通しが立たなくなった。
党総裁である岸田氏の事実解明にすら腰の引け続けた姿勢が、混乱を招いたというほかない。
事態の行き詰まりに追い込まれ、岸田氏が自ら政倫審に出席することで打開を図った。安倍派幹部4人も全面公開での出席に応じ、開催にこぎつけはした。
当初から指示すれば済む話だったのではないか。党内の統治力のなさが改めて浮き彫りになったといえよう。
本紙は事件発覚時から第三者による調査を求めていたが、先月になって自民が行った国会議員アンケートは不記載の有無と金額の2問だけ。党幹部らによる聞き取りも不記載議員の言い分をうのみにした内容だった。
この間、岸田氏は「政治家が自ら説明責任を果たすことが大切」と繰り返し、政倫審開催も「国会で決めること」と傍観を続けた。
きのうの質疑でも、裏金作りの経緯など核心部分は「確認できなかった」とかわし続け、大臣規範に抵触を指摘された自身の政治資金パーティーを「在任中は開催しない」と約束するにとどまった。
裏金不祥事に対する岸田氏の覚悟と危機感への疑念が膨らむばかりである。きょう政倫審に立つ安倍派幹部たちに国民の前で事実をつまびらかにするよう、今度こそ強い指示をするべきだ。
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