京都のスペイン料理店が巨大鍋持ち込みパエリア 能登の被災地で炊き出し支援
京都新聞 / 2024年2月21日 17時45分
京都市で難民問題をラジオ発信している団体「難民ナウ」(左京区)と、スペイン料理店(中京区)の店主が、能登半島地震の被災者のための炊き出し活動を続けている。「魚を食べたい」との要望を踏まえ、巨大鍋を持ち込んで海鮮パエリアを提供。活動への支援を呼びかけている。
最初の炊き出しは2月14日、石川県七尾市中島町にある被災地NGO協働センター支援拠点で実施した。事前に難民ナウ代表理事の宗田勝也さん(57)が必要な支援を尋ねたところ、同町は漁師町だが断水で魚をさばけなかったり、支援物資や炊き出しも肉系の食事が多かったりと、魚料理への要望を把握。スペイン料理店「Cafe Barraca.」のオーナーシェフ、木下清孝さん(53)に相談した。
木下さんによるとパエリアはもともと「ブドウ畑や漁港などの労働者が仕事の合間に簡単に作り、仲間と食べる料理」。魚や野菜を炒めて水を注ぎ、生米を入れて煮立てればできるので手間も調理器具も少なく、炊き出しに適しているという。店にはイベントなどで使う直径130センチの大鍋があり、東日本大震災や熊本地震の際にも炊き出しをしてきた。
今回は300人程度への提供を求められたが、米30キロやタラ12キロ、鶏肉12キロなど余裕をもって約400人分を準備して現地へ向かった。
食事の時間になると住民らが続々と訪れ、1時間半ほどでなくなった。木下さんと宗田さんのほか、羽咋市で被災した木下さんの親戚ら3人も手伝ったという。「魚が食べられる」と喜ぶ声だけでなく、巨大鍋に驚いたりパエリアを初めて食べたりと、笑顔も広がった。
大家族で暮らす人が多く、1人が7、8人分を申し訳なさそうに受け取ったといい、「みんなが『すみません』って。遠慮せんでいいのに、胸が痛かった」と、木下さんは振り返る。
七尾市では世帯数2万2千に対し約1万3千戸が被災。食料支援が行き届いていない部分もあるといい、「昨日はおにぎり1個だった」と打ち明ける人もいたという。
今後も月1回程度、被災各地で継続する予定。水産業の盛んな被災地にはイスラム教徒の技能実習生が多く、戒律に従ったハラル対応の食材によるパエリア炊き出しの可能性も探る。
食材費や燃料費など1回ごとに15万円前後の持ち出しとなっており、難民ナウは支援を募っている。宗田さんは「パエリアが人を元気にさせる食べ物だと実感した。支援への思いを料理として現地に届けるために協力してほしい」としている。
問い合わせは宗田さん090(5063)3206。振込の受付口座は、三井住友銀行京都支店=普通預金、口座番号9733090、名義「一般社団法人難民ナウ」。
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