社説:物流の残業規制 混乱回避へ対応を急げ
京都新聞 / 2024年3月7日 16時0分
トラックやバス、タクシーなどの自動車運送業、建設業、医師など4業種に対する時間外労働(残業)の上限規制が、来月1日から始まる。
物流分野では、トラック運転手の残業が年間960時間に規制される。運転手の人手不足は深刻化しており、何も対策を講じなければ、2024年度に運べる荷物の量が19年度比で14%減、30年度は34%減ると見込まれている。
一般規制より5年間の猶予が設けられ、「24年問題」として警鐘が鳴らされてきたが、対策の遅れが否めない。官民とも混乱を避けるべく総力を挙げるべきだ。
政府は先月になって、中長期計画を打ち出した。共同輸送による積載率の引き上げや宅配の再配達率の半減に加え、「商慣行」の一つで、長期間労働につながる積み込みや荷降ろし作業の荷待ち時間削減を掲げた。30年度までに125時間(運転手1人当たり)減らすとした。
荷待ち時間の削減計画作りを荷主に義務付ける法改正案を近く国会に提出する。不十分な場合は罰則を科す方針で、計画と法規制により輸送力の維持を図るという。
人材確保に待遇改善は不可欠だ。トラック運転手は全産業平均と比べ、年間の労働時間が約2割長い一方、年間所得額は約1割低い。運送業者は中小企業が多く、多重下請けが常態化している。低賃金を招く要因の一つである。
国土交通省は目安として示す「標準的な運賃」を平均8%に引き上げる。契約条件を明確化し、正当な対価を得られる環境が求められる。運転手からは残業規制で収入が減るとの懸念の声もあり、賃金と働き方の両面から改善を進めねばならない。
悪質な荷主や元請け事業者の監視に、国は「トラックGメン」を配置しているが、全国で約160人では目が行き届かない。さらに人数を拡充してチェック体制を強化すべきではないか。
大手企業は、物流の効率化に動いている。ライバル企業や異業種で連携し、製品の共同配送や、鉄道・船舶を使った「モーダルシフト」を進める。自動運転やドローンなど新技術の活用も含め、業界を挙げて中小にも広げたい。
働き手全体が減る中、手軽なインターネット通販で急拡大した輸送需要の見直しは欠かせない。「不急」ではないのか。運転手らの負担で成り立ってきた通販の「送料無料」は妥当か。販売側と消費者の応分の負担も考えたい。
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