キャンパーに人気の琵琶湖岸駐車場、有料化はマナー向上に効果なし? 社会実験で見えたものとは
京都新聞 / 2024年2月26日 17時0分
琵琶湖を眺めながら無料でキャンプやバーベキューができると人気の滋賀県内の湖岸緑地で昨年、利用者から駐車料金を徴収する社会実験が行われた。利用マナーの向上を狙ったものの、周辺の公園でごみが増えたり、赤字が出たりと、課題が明らかになった。そもそも駐車場の有料化は、マナー向上の手法として有効なのだろうか。
■コロナ禍で「密」避けられると人気に
ごみ投棄やトイレの汚れ、駐車場の場所取り…。新型コロナウイルス禍で「密」が避けられるレジャー地として利用が急増した湖岸緑地は、環境の悪化に直面している。SNS(交流サイト)で「無料のキャンプ場」などと紹介されたことも後押しした。
1990年代までに野外レクリエーションの場として整備された湖岸緑地は県営だけで63あるが、キャンプ場としての利用は想定されていない。電気や下水道などのインフラが十分整っておらず、洗い場などもない。ただ、キャンプは禁止しておらず、県の有料化社会実験は、かさむ管理費の一部を利用者に負担してもらう仕組みを構築することも目的に行われた。
実験は、公園利用者から駐車料金を徴収する形で昨年4~5月と11月の2度行われた。昼間のみの事前予約制とした1回目は、10日間のうち3日間はバーベキュー客らで満車になった。2回目は昼夜連続の時間制で3日間行ったが、駐車率は最大で39%にとどまった。周辺の無料の公園に車が流れ、ごみも増えてしまった。
■社会実験の結果 実は2度とも赤字に
社会実験での駐車料収入は1回目52万8千円、2回目4万8千円で、集金対応の人件費などを差し引けば、2度とも20万~30万円の赤字だった。県は2度の実験を経た今も「駐車場の有料化は有効な選択肢の一つ」とするが、マナーの向上より、利用者を遠ざけてしまう効果のほうが大きかったようにみえる。
マナーを向上させるのならば、利用環境を整え、対価を取って客を招く手法もあるのではないだろうか。
■南湖の湖辺域の大半が「活用エリア」
県は2020年に発表した「みどりとみずべの将来ビジョン」で、南湖の湖辺域の大半を「活用エリア」とし、民間によるカフェやグランピングの導入を検討する方針を打ち出している。しかし、こうしたビジョンがあることは知られているとは言えず、県も積極的に広報していない。「河川法などの規制があり、実際に導入するのは容易ではない」(担当課)というが、大津市が管理する湖岸緑地なぎさ公園では、公募設置管理制度(Park―PFI)を活用して菓子製造販売会社が集客施設の整備を始めている。
三日月大造知事は「世界一魅力的な公園づくり」を掲げている。県土に占める自然公園の面積の割合が全国1位の滋賀県。県内外から多くの人々を引きつける公園づくりに向け、もっと民間の知恵を活用してほしい。
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